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23 November

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02 May

時を駆けた勇者

・ゼルダの伝説 時のオカリナ 小話。
・ずっとリンクの独白。
・タイムパラドックスな部分を自分なりに考えてみた。
・今回も唐突に始まり唐突に終わる。

 以上よろしければ、追記よりどうぞ。










 貴方の時をお返します――
 伏せ目がちに言われた彼女の言葉と共に、俺は優しいけれど残酷な光にこの身を委ねることとなった。



 ハイラルが混乱に陥った時、俺は当時たった九歳のガキだった。しかし時の剣と賢者は俺の素質を見抜き、七年の時を設けて魔王の対抗馬を熟成した。
 熟成といっても、特に何かしたわけではない。ただ、魔王とその手下に殺されないように安全な場所で眠らされただけだ。目が覚めた時、見知らぬ場所で見知らぬ男になっていたことには酷く驚かされた覚えがある。

 街も、人も、体も、時間の流れも確かに七年後だった。けれど、記憶だけは。この身に宿る魂だけは、ただの九つのガキだったんだ。


 彼らの目論見は成功した。俺は過去と未来を行き来し、他の賢者たちを目覚めさせ、姫を救い、魔王にこの手で止めをさしたのだ。ハイラルは平和になり、めでたしめでたし。けれど、ただ眠らされていた時間は決して帰ってこない。大人といえるこの姿では、唯一記憶にある七年を過ごした故郷にすら、戻ることはできなかった。

 俺は、どうやって生きていけばいいんだ?

 徐に浮かび上がった戦慄は、どんどんと膨れあがっていく。ああ、魔王と対峙した時でさえ、こんなに体が強ばっただろうか。魔物と闘い怪我を負った時も、こんなに足元が覚束無かっただろうか。歯を噛み締めようとして失敗し、ならばと拳を強く握ろうとして、噴き出した汗で滑らせてしまう。けれど我武者羅に立ち続ける俺をじっと見つめた彼女は、眉を寄せ唇を噛み締めながらも、昔と変わらぬ優しい声で残酷な信託を下したのだった。



 あれから七年の時が経ち、俺はあの時の自分と同じ姿になった。
 ゼルダに戻してもらった時は、俺が眠っていた時間とはまた違うようだった。俺は過去に戻ってまず、再び城に忍び込んだ。果たしてそこにはゼルダはいた。ガノンドロフはハイラル王に臣下の礼をとり、ゼルダは俺のことを覚えていない様子で、まるで俺だけおかしな夢を見ていたかのような感覚に囚われたものだ。
 けれど、俺がハイラルから去ってから事態は急変した。ガノンドロフはハイラルを掌握し、魔物はそこここに溢れ、人々は恐怖に震える日々を過ごすこととなったのだ。無論俺は闘った。闘ったが、この幼い体で救えるのは、本当にひと握りの人間だけだった。



 だから俺は戻ってきた。この始まりの地、ハイラルに。そして今、あの時と同じように、あの時の相棒と共に、あの時と変わらず刺さったままの剣を前に立っている。
 この剣を抜けば、魔王を倒しゼルダを救うための力を手に入れることができる。既に大人の身だ、また眠らせ続けることもない。大丈夫、俺は認められたじゃないか。魔王だって一度倒している。何を恐れる必要があるというのだ。

 これを抜けば、俺はまた過酷な闘いに身を投じなければならない。だが、それでも。

 俺は手に汗を握りながら、大きく一歩踏み出して慣れ親しんだ剣の柄にそっと手を掛けた。細くなった息をつとめて大きく吐き出して、口の中で三つ数える。
 1、2、3・・・・!
 同時に剣を勢い良く抜く。ああ、この感覚、重さ。これだけは、七年前と何も変わらない――
 そう思った瞬間、俺の意識は強い力に引き寄せられるように、深い深い闇の底へと落ちていったのだった。




  時を駆けた勇者




 目が覚めた時、すべては終わっていた。俺は時の勇者として英雄視され、今もゼルダの横に並んでいる。
 手を差し延べると、わずかに頬を赤く染めながら嫋やかな手を重ねる彼女をぼんやりと眺める。確かに彼女は、俺が救った。ならばなぜ、こんなにも居た堪れない気持ちになるのだろうか。


 俺は世界を救った。
 だが、救ったのは俺じゃない。過去の俺なんだ。





==眠り続けたのでは大人時代から子供時代に戻ることはできないだろうとか、ガノンドロフは
 大人の時代に倒したのだから、子供時代は変わらないままじゃないかだとか、もしも歴史が
 変わったのだとしたら時の勇者伝説は何だという話になるので、過去と未来、二人のリンク
 がいるかこの話のように大人時代の肉体を使っていたということにしなければどうにもなら
 ないと思うのです。

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