しばらく放置していた物その2。
姉のリクエストで子どものRPができるシナリオを、ということで童歌ネタをば。
プレイするたびに状況が変わるシナリオを目指しました。
気が付いたら殺意の高いスプラッタ物になっていましたが、よほど運が悪くなければ全滅はないんじゃないかと思います。
7人くらいまでならなんとかできると思うので、ご自由にお使いください。
読みやすく章毎に分割したものはPixivにあります。そちらもどうぞ。
かごめかごめ シナリオ制作者:野乃小町(ののこまち)
推奨人数 2人~4人
所要時間 不明
難易度 難? KP難易度 難 ロスト率 高
舞台 現代日本・シティシナリオ
推奨技能 目星、図書館、精神分析
また、戦闘技能、隠れる、登攀があると役に立つかもしれない
制限 探索者は全員同じ街で暮らしていること
その他 ヒプノーシス(催眠術)を持っていてもよい
1. 概要
探索者はある日を境に不思議な夢を見るようになる。子どもに戻り、他の子ども達と「かごめかごめ」で遊ぶ夢だ。多くの犠牲者を出しながら、子ども達は遊び続ける。謡い続ける。
「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀がすべった うしろの正面だあれ」
2. シナリオの背景
死を恐れた信者達によりアイホートの雛を移された探索者達が、アイホートの雛の見せる幻覚と戦うことになる。
犠牲者達に植えつけられた雛は日に日に成長し、順に籠から飛び立っていく。探索者達は生き残るためにも、この雛を除去しなければならない。
アイホートは「門」を使って探索者達の街に居座り、信者を増やしている。たとえアイホートの雛を取り除いたとしても、「門」を何とかしない限り脅威は完全には去らないだろう。
幻覚の舞台は探索者達が暮らす街の過去の姿である。過去の街と現在の街を探索し、探索者達は無事アイホートの脅威から街を救えるのだろうか。
3. 導入
探索者達はいつもと同じように日中を過ごし、夜分に帰路につく。探索者達は珍しいことに、ちょうど同じ時間に同じ路地を通るだろう。
暫く細い一本道を歩いていると、道の真ん中をふらふらと歩いてくる人影が目に入る。その人物は黒い外套を着ており、フードを深く被っているため顔は見えないが、探索者の方へ顔を向けているようだ。
その人物に対して<目星>に成功した探索者は、手足があらぬ方向へぐにゃぐにゃと曲がっていることに気がつく。
さらに<アイデアロール>に成功すると、この人物には外傷がないのに手足の骨が存在しないことに気がつく。そんなおぞましい人物が近づいてくることに恐怖した探索者は 0/1d3 のSANチェック。
その人物に対して攻撃を仕掛けた場合、相手は回避をせずその場に倒れる。
<組みつき>に成功した場合、<アイデアロール>もしくは<医学>を振る。成功した場合、この人物には内蔵がほんどなく、小さな物がビーズクッションのように沢山詰まっているだけだと気がつくだろう。中からはカサコソ、カサコソ、と虫が蠢くような音が聞こえる。そのおぞましい風船のような体を抱えた探索者は 1d2/1d6 のSANチェック。<アイデア>か<医学>に失敗した場合でも、人間とは思えないぐにゃぐにゃとした気持ちの悪い感触にSANチェック 0/1 。どちらの場合も、抱えた体は腕から抜けて足下に崩れ落ちるだろう。
倒れたその人物は暫く痙攣するような動きを見せるが、そのうちピクリとも動かなくなる。
<聞き耳>に成功した場合、カサコソ、と虫が動くような音が前後から聞こえてくる。
しばらく前を見ていたり、後ろを振り返ったり、後ずさりした場合、探索者は背後に人がいることに気がつくだろう。
探索者がその顔を認める前に、強い衝撃が頭を襲い目の前が真っ暗になる。他の者も背後を振り返る前に頭を殴られ、気を失うだろう。
この道は一本道のためカーブミラーはないが、何らかの方法で背後を見た場合、探索者のすぐ後ろに前方の人物と似た格好のフードの人物が探索者と同じ人数いることを確認できる。
なお何か物を取り出そうとした場合、取り出す前に襲われることだろう。
探索者達が意識を取り戻すと、そこは先ほどと同じ寂れた細い路地である。フードの人物達はいなくなっているが、殴られた頭以外は特に痛みもなく、何も変化はない。
探索者が荷物を確認した場合、何一つ奪われていないことが分かる。また、何かが増えていることもない。全く手をつけられなかったようだ。
探索者達は暫く首をひねっているが、病院がやっている時間でもないので仕方がなく家に帰り、いつもより早く床につくだろう。
この時に連絡先を交換するようにKPが誘導すると、二日目以降の探索が楽になる。
もしも交番に届け出た場合、交番にいた巡査がそれぞれに<応急手当>をしてくれる。処置が終わると巡査は家で安静にするように言い、このところ同様の不審者が何人も目撃されていることを教えるだろう。
4. 夢の始まり
眠りについた探索者達は、気がつけば昔ながらの空き地で小学生ほどの子供と手を繋いでいる。子供達は互いに手を繋ぎあい、一人の子どもを中心に大きな輪を作っているようだ。自分の他にこどもが六人おり、大人はいない。
探索者は自分の視点が非常に低いことに気がつく。自分の体を見てみれば、小学生の頃の姿になっていることに気がつくだろう。
<アイデアロール>に成功すれば、その探索者はこれが夢だと気がつく。失敗した探索者は、突然の自分の体の変化に怯え 0/1 のSANチェック。
登場する子供達は22. NPCの欄に纏めたが、本来は全員大人である。
中央でしゃがんでいる子どもは神崎直人だが、輪になっている子どもの順番は自由にして構わない。
探索者は子どもの姿の時、STRとSIZを-1d2、CONかDEXを-1d3する。
もしも他のシナリオで子どもの姿になったことのある継続探索者の場合、そのシナリオで使用した能力値にしても良い。ただし知識は普段と同じなので、EDUや技能値はそのままにすること。
幻覚内で着ている服は就寝時に着ていた物と同じ形だが、体に合わせて縮んでいる。
身に着けていた物は全て持っているが、インターネットも携帯電話も通じない。
KPは<POW×5ロール>をNPCの子ども達のうち神崎と佐藤以外の全員分行う。神崎直人と佐藤茂は自動失敗である。
成功した子どもは大人と同じ精神を持っており、夢から覚めても夢の内容を鮮明に覚えている。
失敗した子どもは夢の中でアイホートの雛に統率され、アイホートの言うことに従う素直な子どもになる。また、夢から覚めてもおぼろげにしか思い出せなくなる。
<心理学>に成功すれば、明らかに精神状況がおかしいが、何らかの働きかけをすれば元に戻るのではないかと思う。
<精神分析>に成功すれば、失敗した子どもも成功した場合と同じ状態に戻るが、夢の詳細な部分までは思い出せない。
<ヒプノーシス>に成功した場合、統率された子どもも正気に戻り、詳細な夢の内容を思い出す。ただし、夢で起きるはずだった正気度喪失が起きてしまう。
なお、神崎直人は毎朝自分で<精神分析>を行い、必ず正気に戻る。
5. かごめかごめ
探索者達が自分の状態を確認すると、アイホートの雛に統率された子ども達は手を繋いだまま「かーごめかーごーめー」と唄い、円の中の子どもを中心に回り始める。
探索者が一緒に口ずさんで回らない限り、彼らは「神様に怒られるよ」「いーけないんだ、いけないんだ!かーみさまに言っちゃーお」等と文句を言うだろう。
手を振りほどいて逃げようとすれば、子ども達は追いかけて捕まえようとする。それでも逃げる場合、隣の子どもとのDEX対抗ロールになる。
かごめかごめが始まり、歌が終わると、鬼の後ろの正面は佐藤茂である。鬼は彼の名前を当てる。すると佐藤は突然腹を押さえ、苦悶の表情を浮かべたかと思うと、強烈な叫びと共に彼の腹が裂け、中から青くてぶよぶよとした蜘蛛か地虫に似た生き物が大量に這い出して来る。手、腿、口、胸、頭、眼孔と、生き物は体のあちこちから噴き出すように出てくると、四散してそのうち見えなくなった。残されたのは土気色になった少年の生皮と血だけある。破裂したように皮膚はボロボロだが、骨や内臓は全く見えない。目の前で子どもが信じ難いような死に方をし、言いようもない恐怖に駆られた探索者とアイホートの雛に精神を乗っ取られていない子どもは 1/1d8 のSANチェック。
探索者達が呆然としていると、突然視界が暗くなり、探索者達は意識を手放す。
目が覚めると、そこはいつもの自分達の部屋である。
酷い脂汗をかいているが身体は大人であり、どこにも外傷はない。うなされていたのか乱れてはいるものの、探索者が最後に寝た時と同じ姿格好である。
探索者は平静を保とうとテレビをつける。しかし、ちょうどやっていた朝の速報に探索者達は驚くだろう。探索者達が住むこの街で怪死体が見つかったのだ。
怪死体は土気色に変色し、中から破裂したかのようにバラバラになっていたが、骨も臓器も見つかっていないという。前夜までこれといった病気もなく健康そのものだったそうだが、妻が朝起こしに行くと死亡していたらしい。
生前の写真が映された時、探索者達は気がつくだろう。年齢こそ違うが、彼には昨夜の夢で犠牲になった少年の面影が確かにある。彼は昨夜の夢と同じように死んでしまったのだ。
探索者達は、一刻も早くあの夢から逃れなければ、自分もこのように死んでしまうと確信するだろう。
6. 探索者の進む道
探索者達は、日中は自分たちの街を、夢ではかごめかごめをしてから過去の街を探索することになる。
日数制限はないが、一週間以内でなければクリアは難しいだろう。
現代の街と過去の街では、以下の場所にヒントが隠されている。
現代の街… 9. 犠牲者の自宅、10. 図書館、11. インターネット、12. 交番、13, 14, 15, 19. 緑ヶ丘小学校、18. 桑山神社
8. 過去の街…16. 図書館、18. 桑山神社、17, 19. 緑ヶ丘小学校
緑ヶ丘小学校は探索箇所が多いが、ほとんどの場所は現在と過去で共通して調べられる。
なお、今回のシナリオではNPCと探索者、NPC同士、探索者同士との間に親密度を用意する。親密度は以下の通りである。
親密度0…全く知らない
親密度1…噂や話を聞いたことがある
親密度2…顔見知り
親密度3…たまに会話する
親密度4…連絡先を知っている
親密度5…よく話す
親密度6…プライベートの話をする
親密度7…友達
親密度8…よく連絡を取り合う友達
親密度9…親友、幼馴染、家族
7. 二日目以降のかごめかごめ
探索者達は夜12時になると強制的に眠りにつき、朝の6時まで目覚めない。
かごめかごめの夢は毎晩見るが、昼までに死亡した者は夢に出ることはない。
かごめかごめは基本的に一日目と同じ流れだが、いくつかの差異がある。
かごめかごめが始まる前の子ども達の<POW×5ロール>は、二日目からは探索者達も振ること。
そしてPOWロールの出目が大きい順に、後ろの正面、鬼、後ろの正面の左隣、その隣、と輪になる。
ただし鬼になったことのある子どもは一巡するまで後ろの正面にはならない。
後ろの正面が誰か分かるためには、1d100で<後ろの正面との親密度×10>よりも低い出目でなければならない。
誰か分からなくても当てずっぽうで答えることは可能であるし、分かっても答えなくて構わない。
ただし、アイホートに統率された子どもは名前が分かれば必ず答え、分からなければ違う名前を答えること。
なおアイホートに統率された子どもが鬼になった場合、かごめかごめが終わり名前を当てる段階で再び<POW×5ロール>を振ることになる。成功すればその日の夢だけはアイホートの支配から逃れ、正気を保つことができる。
二日目以降は雛が巣立つところを直視してもSAN減少は 0/1d6 である。
かごめかごめが終わると、探索者達は気が遠くなり、そのまま気絶する。
目覚めた後、テレビをつけるとその日の犠牲者の死体発見が報道されている。
ただし神崎直人が死んだ場合報道はされず、緑ヶ丘小学校旧校舎の図画工作室に死体がある。
なお、最後の一人になった後かごめかごめの夢を見ると、強制的に雛が孵りバッドエンドとなる。
8. 過去の街
かごめかごめの幻覚は本来6時間ある。かごめかごめをやらずに逃げ出せば、探索者達は自由に街中を探索することができる。
ただし、6時間経てば何をしていても突然視界が暗くなり、意識を失う。
また、気絶すればすぐに幻覚から目を覚ますことができる。気絶した者は霧散するように幻覚の世界から消えてしまう。なお、気絶して幻覚の世界から早々に消えた者は、幻覚の世界で負った傷がそのまま現実世界でも残る。
6時間逃げ回るか全員が気絶すれば犠牲者を出さずに次の日を迎えることも可能であるが、逃げ出して2時間もすればアイホートが小学校から出てきて、逃げ出した者を探し始めるだろう。
逃げ出した者は2時間に一度<幸運ロール>を振る。成功すれば何もないが、失敗した場合、10分後に最も出目が高い者がいる場所へアイホートがやってくる。
見つかればアイホートは逃げ出した者を追い詰めて、空き地に戻ってかごめかごめを行うよう迫る。拒否すれば強打して殺すし、逃げ出せばアイホートの雛に統率された子ども達を操って再び追い詰めるだろう。
雛を植え付けられたままだがかごめかごめに参加しなかった者は、起床時にHPを-1する。
幻覚は25年前の街を舞台にしている。
街中を走る道や店などは探索者達の住む街に似ているが、どこも古い建物ばかりである。逆に探索者達が知る古びた建物や廃屋は新しく、建てられてそう年月が経っていないと分かる。また、生き物はどこにもいない。
探索者達が街の歴史に詳しければ、<アイデアロール>に成功し次第ここが25年前の自分達の住む街だと分かるだろう。
探索者達が街について詳しく調べたことがない場合、<街にいる年数×5>ロールに成功すれば同様の結果になる。
時代や地域を考慮しておかしくないものであれば、どんな建物があっても構わない。
ただし、図書館と緑ヶ丘小学校、桑山神社はある。図書館は空き地から徒歩で1時間ほどの距離、緑ヶ丘小学校は徒歩で1時間半、桑山神社は徒歩40分ほどの距離で、図書館から小学校に行くには40分、小学校から神社までは1時間半ほどかかる。
空はショッキングピンクに赤と紫の絵の具を垂らしたような、見るだけで不安を覚える色合いをしている。
街の外は完全な闇が広がっており、これ以外先に進んではいけないと本能的に立ち止まる。
それでも進んだ場合、目の前にアイホートがやってきて探索者を叩き潰してしまうだろう。
9. 第一の犠牲者
初日のニュースで報道された家は、街の中心部から少しだけはずれた位置にある。
家の周囲には警官と野次馬が集まっており、家族と会うことはできない。
家の周りを一周してみれば、壊れている箇所はないことが分かる。
警官に話を聞くと、口の軽い警官が現在猟奇的殺人事件として捜査していること、重要参考人として家族達は警察署にいること、侵入経路がなかったため家族の犯行とみているが、なくなった骨や臓器が運ばれた形跡がなく行方不明なことを教えてくれる。
基本的には警察署に行っても門前払いだが、警察関係者ならば家族に話を聞けるかもしれない。
家族からは夕食後、犠牲者は疲れていたらしくすぐに就寝したこと、夜一時頃魘されている姿を確認したが、特に異常はなかったことを聞ける。
最近何かあったか聞くと、犠牲者が自宅付近で噂の不審者に会ったと話していたと言う。
不審者について詳しく尋ねた場合、以前地域の新聞に載っていたことを教えてくれるだろう。
なお死体解剖の結果を確認すると、まるで内側から小さな虫に臓器から骨まですべて食い尽くされたかのような状態だったと分かる。
家の前には夢に出てきた子どもたちの面影がある人々もいるが、神崎はいない。
彼らに話しかけると、アイホートの雛に統率されていない者からは昨夜探索者達と同じ夢を見たこと、雛に統率されている者からは昨夜の夢は覚えていないが妙な既視感があり駆けつけたことが聞ける。
かごめかごめの話をすれば、雛に統率されている者も夢の中でかごめかごめをして遊んだことは思い出すだろう。
彼らは全員黒いフードの人物に襲われている。
中には顔を見た者もいるが、特徴がバラバラなことから異なる人物だと分かるだろう。
一致していることは、黒い外套を着てフードを深くかぶっていること、足取りが覚束無い様子だったこと、後頭部を殴られて気絶したことから複数人の犯行だということ、荷物には触られた形跡がなかったことである。
警察官に黒いフードの人物について問えば、最近よく目撃されている不審者と特徴が一致していることを教えてくれる。
不審者は街中で目撃されているが、出没する時間帯や場所に一貫性はないという。
何度か地域の新聞に取り上げられているため、図書館か何かで調べてみることを薦められる。
10. 図書館
図書館やインターネットで最近この街で騒がれている不審者について調べると、該当する記事を発見する。
記事は以下の内容である。
「最近この街で不審なフードの人物の目撃情報が増えている。
件の人物達は黒い外套を着てフードを深々とかぶっているが、背格好、顔つき、性別、年齢がバラバラであり、また同時刻に複数箇所で目撃されていることから複数いるとみられる。
不審者達は出没場所や時間に一貫性はないが、足取りが覚束ず時折呻き声を上げながらも、周囲の人間を注意深く観察している様子。
この不審者達に暴行された者もいるが、荷物には手をつけられていないことから物盗りではないとして警察は調査を進めている。
一度緑ヶ丘公園傍にある交番の巡査が追ったが、別のフードの不審者達に妨害されて見失ったという。」
緑ヶ丘公園について調べると、その公園は街の中心部にあるが、少し脇道に入った場所にある小さな公園なので、小さな子ども連れの親子はよく来るが平日の夕方は人通りが少ないこと、交番がすぐ近くにあることが分かる。
場所は調べれば分かるとは思うが、志筑に尋ねれば案内してくれるだろう。
<図書館>に成功すると、『名前当てゲーム』という小説を見つける。
この小説は誘拐された主人公が、生死をかけた名前当てゲームに参加させられる話である。このゲームは目隠しされた状態で集められた参加者達の中から二人が指名され、名前を当てられなければ自分が死亡し、名前を当てたならば相手が死亡するというものである。ゲームは最後の一人になるまで続けられる。ヒントはないが、次の指名までのハーフタイムの会話が鍵となる。主人公は、共に巻き込まれた幼馴染の運命は。近日ドラマ放送予定。
11. インターネット
インターネットで「夢」について調べると、「猿夢」という都市伝説が出てくる。都市伝説の概要は以下の通りである。
「猿夢は明晰夢の一つである。
遊園地にあるような子供向けの猿の電車に乗ると、「次は、さいの目」などというアナウンスと共に、乗員が順に残虐な方法で殺されていく。
猿夢の中で死ぬと現実でも死ぬという。
夢から無理やり目覚めたり、非常停止ボタンなどで電車を止めれば助かるが、二度目には「次は逃がしませんよ」という声を聞いた人もおり、三回見ると確実に殺されるとまことしなやかに囁かれている。」
「かごめかごめ」について調べると、歌詞とそれに関する都市伝説が出てくる。
歌詞は次の通りである
「かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀がすべった うしろの正面だあれ」
都市伝説の概要は以下の通りである。
「かごめかごめの歌詞は地域によって微妙に異なっており、解釈も定まっていない。
近年広がっている俗説に、流産した妊婦の恨みの唄だとするものがある。
「かごめ」は籠女であり妊婦を、「籠の中」は妊婦の腹の中、つまり胎児を指す。
その妊婦は誰かに背後から突き落とされ流産してしまったため、生まれない子どもをいつまでも待ち続けているという。」
12. 交番
緑ヶ丘公園傍の交番に行くと、ちょうど一人の巡査がいる。彼が件の不審者を追った巡査である。
巡査に例の不審者について尋ねると、他にも同じことを聞きに来た人がいたことを教えてくれる。この人物は神崎直人である。
巡査は件の不審者がここ最近街に増えていると嘆く。
この巡査は隣町に住んでいるが、そちらでは全く目撃情報がないという。
巡査は新聞にも書かれていた、不審者を追った時の話をしてくれる。「あの時、たまたま噂の不審者を見かけたのでこっそり追いかけたが、同様の不審者からの妨害に遭いそれ以上追うことはできなかった。緑ヶ丘小学校のの旧校舎の方に向かったようだが、入り口から入った形跡がなかったためどこに行ったのかは分からない」
緑ヶ丘小学校は緑ヶ丘公園から徒歩20分ほどの距離にある。彼か田村、志筑に聞けば緑ヶ丘小学校の位置を教えてくれるだろう。
13. 緑ヶ丘小学校
緑ヶ丘小学校は新校舎の脇に旧校舎が建っている。
旧校舎は敷地内にあるため、許可を得て入るか忍び込むしかない。
緑ヶ丘小学校には志筑の子どもが通っているほか、田村の知り合いがいるので、どちらかに頼めば許可をもらえるだろう。
理由を言わなくても<言いくるめ>できればその日だけ探索を許してくれる。ただし後日<言いくるめ>をする場合、-10%の補正がつく。
小学校の敷地は柵で囲ってあるが、何箇所かに扉がある。基本的には南京錠で施錠されているが、旧校舎の陰にある扉は鍵に細工がしてあり、一件鍵が掛かっているように見えるが簡単に開けることができる。この道は件の不審者が使用していた侵入経路である。
緑ヶ丘小学校では7時、12時、17時から45分間、当番の先生による見回りが行われる。旧校舎の周囲も見て回るので、この時に忍び込むと見つかる危険がある。
見つかった場合先生は不審者として対応するので、警察手帳などの身分証明書を見せない限り<信用><言いくるめ>などのロールに-15%の補正がつく。
旧校舎の鍵が開いていることを気がついたならば、見回りの先生は旧校舎内の廊下を見回りした後再び外から鍵を閉めるだろう。
なお、17時からの見回りが終わった18時以降は新校舎と校門にも鍵がかかり無人になる。
緑ヶ丘小学校が校舎を変えたのは25年前のことである。
緑ヶ丘小学校の先生に校舎を変えた理由を聞くと、先生は老朽化と地区の子どもの増加だと答える。
ただし田村がいるか<信用>に成功した場合、「ここだけの話ですが」と伝え聞いたことを教えてくれる。
「なんでも25年前、生徒が不審な死を遂げたそうで……。当時の校長が旧校舎を封鎖し、誰も立ち入らないよう厳命したのです。その校長も、その後間もなく行方不明になったそうです。噂では、あそこには悪魔がいるだとか……とにかくお気をつけください」
14. 旧校舎
旧校舎はコンクリート造の三階建てで、老朽化によりあちこちにヒビが入っている。
旧校舎の正面扉には鍵が掛かっており、緑ヶ丘小学校の教員に頼むか<鍵開け>に成功しなければ開かない。
正面扉の脇には張り紙がある。張り紙は以下の内容である。
「新校舎への移転と旧校舎の閉鎖について
(25年前)年 8月17日
青木 康 校長
晩夏の候、いかがお過ごしでしょうか。
この度、校舎の老朽化と地区の児童増加を受けて、新校舎を建設しそちらに移転することになりました。
新校舎建設にあたり、児童の安全のため夏休み明けから一時的に地区センターで授業を行うことになります。
新校舎の建設は9月3日から開始し、完成は1月を予定しております。
旧校舎内は新校舎設立後も立ち入り禁止となります。
ご理解とご協力の程よろしくお願い致します。」
旧校舎内の壁には高さ150cmほどの隠し戸が二つあり、どちらも茂みに隠されている。
隠し戸は外開きで、開けると人ひとり入るのが限界な小部屋があり、目の前に鍵のかかっていない扉がある。
隠し戸はどちらも旧校舎一階の消火栓に繋がっている。消火栓は東階段や校長室前にあるが、どちらも扉に絵とランプがついているだけなのだ。一つの階に消火栓は二つなので、一階で消火栓を使うことは出来ない。
旧校舎の一階には下駄箱、保健室、職員室、校長室、図画工作室、倉庫があり、二階には一、二、三年生の教室が六つと理科室、倉庫が、三階には四、五、六年生の教室が六つと家庭科室、音楽室がある。トイレは各階に一つずつあり、階段は校長室傍の西階段と下駄箱傍の東階段の二つである。水道はトイレ、家庭科室、理科室、図画工作室にある。
これらの情報は、各所に貼られている避難経路の地図を見れば分かるだろう。
各階の廊下には掲示板があるが、張り紙はほとんど剥がされている。残っているのは避難経路の地図と、職員室前の張り紙一枚である。張り紙の内容は以下の通りだ。
「調査へのご協力のお願い 青木 康 校長
8月3日の夏季クラブ活動の最中、5年2組21番原田幸平くんの未来が閉ざされました。
私どもはこの件を受けて調査を続けてきましたが、不審な点が多く調査は難航しています。
事件に直接関係のないことで構いません。少しでも変わったことがあれば、私青木康までお伝えください。
何卒よろしくお願い致します。」
理科室には人体模型が飾られている。
この人体模型を壊した場合、中から大量のアイホートの雛が出てくる。これは神崎直人が移したものである。
この人体模型には追加で三人分の雛を入れることができる。それ以上の雛を移すと割れてしまう。
家庭科室にはマネキンがある。
マネキンには当時の家庭科の先生が製作した服が着せられている。
このマネキンには四人分の雛を入れることができる。
職員室には先生方の机が並んでいるが、がらんどうとして何も無い。
一階の倉庫があるはずの場所はコンクリートの壁があり、他には何も無い。
<目星>をすれば、この場所だけコンクリートの色が違うことに気がつく。
ダクトから入ろうとしても、コンクリートの壁に阻まれてしまう。
二階の倉庫には鍵が掛かっているが、<鍵開け>かSTR5との対抗ロールに成功すれば開けられる。
中にはロープ等の備品がいくつか残っている程度で、がらんどうとしている。
必要な物があれば、ここにあったことにしていいだろう。
校長室には鍵がかかっているが、<鍵開け>かSTR10との対抗ロールに成功すれば開けることができる。
校長室には日本人形がある。この日本人形の胴体は人体模型の胴体の半分ほどの大きさであり、二人分の雛を入れることができる。
さらに机の引き出しを調べると、青木校長の手記が残されている。
手記は25年前の8月3日から数ヵ月続いている。概要は次の通りである。
「25年前の8月3日、5年2組の原田幸平君が突然無残な死にみまわれた。
サッカークラブの練習のため教室で着替えていたはずの原田君が突然破裂した、とクラスメイトの神崎直人君が駆け込んできた時のことは永遠の忘れないだろう。
子どもの生皮、原田君の服、そして大量の血だけが残った教室。とても人の所業とは思えなかった。
私達は神崎君が見たという、原田君の体から出てきた小さな蜘蛛や地虫に似た生き物だけを手掛かりに調査を始めた。
調査を進めたところ、私は原田君が図工で作った像が例の生き物に似ていることに気が付いた。その像は透明な石でできていたが、どうやら原田君が旅行先で拾った物らしい。触っているだけで今まで経験したことのない不思議な感覚になる。何故この石を使ったのか、何故このような形にしたのかということまでは、神崎君でも分からなかった。
伝手を使ってこの石を調べてもらったが、現在発見されているどの鉱物とも異なるようだ。水晶に近いが、どうやらただの水晶ではないらしい。
原田君が亡くなったのは、この石のせいなのだろうか。」
最後まで読んだ者は、この手記が最後のページまで埋まっていることに気がつく。
しかし机の中には古びた文房具と変色した紙があるだけで、他の手記はない。
三階にある五年二組の教室の前に、花が供えられている。
教室内に入ると、明らかに他の教室とは様子が異なっている。わずかな鉄とカビの匂いが漂い、席の一つに大量の血が染み付いている。血は随分と昔のもののようで、完全に固まって黒く変色している。
机をよく見ると、前側に「21 原田幸平」というシールが貼ってある。
教室内のロッカーの上には図工の作品が乗っているが、原田幸平の作品はなく、代わりに図画工作室に展示中だという貼り紙がある。
15. 神崎直人
図画工作室には神崎直人の姿がある。彼はフードのついた黒い外套を着ており、夢をよく覚えている人は最初の日に鬼だった男の子に似ていることに気がつく。
神崎は探索者達を見ると、教壇を動かして隠し扉を開け、ついてくるよう言ってから中に入る。
隠し扉は下開きで、中には短い梯子と階段がある。階段は足元にだけ明かりがあるのでうす暗いが、梯子の脇には懐中電灯が下がっている。
階下は地下室になっており、正面には祭壇がある。左右には部屋があるようだ。神崎は祭壇の前で探索者達が来るのを待っている。
祭壇の横には石碑がある。
<ラテン語>に成功すれば、石碑にはアイホートへの祝辞が書かれていることが分かる。内容は以下の通りだ。
「大いなる雛鳥の父よ、地下深き迷宮の主よ
我らが故郷を選びし事、心より感謝する
我ら籠となり僕となり、雛鳥の母たらん
忠誠の証に、此処に父なる像を捧げる」
祭壇に<目星>をすると20cm四方の台座があることに気がつくが、埃の積もり方は他の場所と同じであり、何かが乗っていた形跡はない。
探索者達が落ち着いたところで、神崎は以下の話をしてくれる。
・ここはとある化け物を崇める祭壇であり、自分はここに信者として集められた一人だ
・化け物は青白くぶよぶよとした楕円形の体で、この世のものとは思えないおぞましい生き物である
・自分達を集めた男は化け物のことをすべての雛鳥の父、地下深き迷宮の主などと呼んでいた
・自分達信者は化け物に契約を迫られ、化け物に雛を植え付けられた者である
・化け物と契約した人間は数年から数ヵ月のうちに死んでしまう。自分達を集めた男は破裂するように死んでしまった
・残された信者達は死を恐れ、逃れる方法を探した結果雛を他者に移す呪文を発見した
・呪文を修得した信者達は街の人々に雛を移していった。探索者達を襲ったのは彼らだろう
・自分は一人残って研究を続け、他の道がないか探した結果、雛を人体模型に移すことに成功した
・呪文についてまとめたノートを幻覚の中の図書館に残した
ここまで話すと、神崎は探索者達に仲間を止められなかったことを謝罪し、ここに置いてある物を自由に使っていいと言う。
なお、神崎がこの話をした日以降、神崎がかごめかごめの幻覚にでてくることはない。神崎がこの場を去った場合、彼に話を聞くことはできなくなる。
原田幸平の家を尋ねた場合、事件の後間もなく引っ越したため家族の居場所は分からないことを教えてくれるだろう。
右手の部屋には信者達の部屋が、左手の部屋には倉庫がある。
信者達の部屋では、狭い四段ベッドが部屋を埋め尽くしている。
<目星>をすると、神崎のベッドに十字架と手記がある。神崎の手記の内容は以下の通りだ。
「25年前、友人を失ったこの場所に俺は戻ってくることになった。
望んだわけではない。青木校長が行方不明になってから、俺はあの日見たおぞましい生き物の影から逃げ続けていた。しかし、これは罰なのだろうか。今俺の中には、あの日見た悪魔が宿っている。
神よ、申し訳ありません。二心があるわけではないのです。ただ俺にはあの化け物が酷く恐ろしかった。あんな生き物がこの街に住み着くなんて!
俺達を集めた男は気狂いだった。悪魔の親玉を信仰し、身を捧げることを至上とするにとどまらず、俺達に雛鳥の父が探しているという謎の像を探させた。薄暗い地下室で行われる儀式。毎晩のように続く悪夢。俺達は次第に正気を失いつつあった。
ある日のこと、気狂い男が破裂して死んだ。原田と同じ死に方だった。阿鼻叫喚の中、俺は悟った。謎の像とは、原田が作ったあの像なのだと。全てはあの日に繋がるのだ。
集められた者達は生き残る方法を探し始めたが、俺はただ一人、原田が作った像を探していた。あの化け物はあの像を狙っている。あの像を何とかしない限り、この街に平穏はない。しかし、原田の像はなかなか見つからないまま、精神と肉体の限界が近づいてきていた。
ほかの男達は解放の呪文を手に入れ、街の人びとを犠牲に生き延びる道をとった。俺は一人、その呪文を元に新たな呪文を編み出し、誰も不幸にならない道を見つけた。
呪文は濫用されてはならない。本当に必要な者にだけ触れられる場所に残しておく。
今こそ籠の中の鳥を解放する時だ。あの悪夢に決着をつけよう。神よ、俺に力を貸してください。」
左手の部屋にはフード付きの黒い外套やローブ、食料の他、木箱がいくつもある。
木箱を開ける場合、<幸運ロール>を行う。成功すれば中身は拳銃やナイフ等の武器だが、失敗すると人の生皮や眼球、指先等が入っている。これは信者や彼等を集めた狂信者の死体である。
死体を間近で見た者は 0/1d3 のSANチェック。
続きを読む
[0回]
PR