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29 March

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23 November

ただ一度だけ、許された日

 好きなサイト様でマリアンヌinジュリアスネタが更新されていてガタガタガッタンとなっている今日この頃。
 このネタ、私が書くとどうしても纏まらなくて・・・そもそも本編でまだマリアンヌ様が動いて喋っているところをみていないから当然といえば当然ですが。やっぱり人様が書かれた物を読む方が好きだ。
 完結、楽しみにしてますね・・・!


 んで、本題というか何というかですが・・・お待たせいたしました!いまさらですがロロナナ誕です^^;
 いろいろと不完全燃焼ですが、追記よりご覧ください。








 少女は笑った。どこか懐かしげに。
 少女は微笑んだ。寂しそうな面持ちで。
 少女は願った。兄以外はいらないと。今日だけでいい。ただ一目兄に会わせて欲しいと。
「だから、一緒に来て。」
 だからって何だ。
 知ることを許されていない少年は、突如現れたピンクハリケーンに目を丸くして固まった。




ただ一度だけ、許された日




 事の発端は、あの女が来たことだった。
 アーニャ・アールストレイム。最年少で帝国最強の騎士となった、ナイトオブシックスの称号を持つ少女。
 彼女が校門前にやってきた途端騒然となったのは、ネット上でしか見たことがない違う世界の人物がいたから、というよりは、皆突然現れたナイトメアに驚いたのだろう。そう、彼女は愛機に乗り込んでいた。
 そして、彼女が――というよりモルドレッドとかいうナイトメアの顔が――俺の方を向いた瞬間、迷わずに少し動いただけで踏み潰されてしまいそうな距離まで詰め寄られ、膝――無論ナイトメアのである――をつかれ・・・目を白黒させることしか出来ない俺に彼女はさらに愛機の顔を寄せ、俺の名を呼んだのだった。
「貴方が、ルルーシュ様。ナナリー様の兄。違う?」
 ナナリー?誰だそれは。
 そう洩らした途端、ロロが俺の背中にしがみついてきた。ああ、ごめんよロロ。今日はお前の誕生日だというのに・・・。俺は後ろ手にそのふわふわの髪にそっと手を入れ・・・た瞬間、全身に激痛が走る。己の体を見下ろすと、そこには彼女の分身の指が。
 ・・・は?
 思わず気の抜けた声が出たが、決して誰にも咎められはしないだろう。それだけおかしな状況だった。
 どこをどうしたら、ごくごく普通の学生である俺が、天下のナイトオブラウンズ様の愛機に鷲掴みにされるという状況が成しえるのか。訳が分からない。
 しかし、彼女はそんな俺の様子など知ったことじゃないといわんばかりに、そのまま地上から飛び立つ。兄さん、と手を伸ばす弟は吹き飛ばされないようにするのが精一杯のようだった。

 すまない、ロロ。ケーキは作れそうにない。

 遠い目をする俺に向かって、すぐ近くのスピーカーが轟音を発する。凄まじい風圧に耐えていた俺は、目の前が真っ暗になっていくのを感じた。
 そんな暴風雨の中心で、少女は一人、誰に言うでもなく言葉をこぼす。
「記憶は曖昧。だから、私は記録に従うだけ・・・。」
 その言葉は、俺に届くことはなかった。



 アーニャ、どこへ行ってしまったのかしら。一人残された私は、広く豪華な部屋で首を傾げる。

 今日は私の誕生日パーティが開かれる予定だった。それを取り止めさせたのは私。だって、プレゼントを受け取る時にいろんな人の手に触れてしまう。情報収集にはもってこいだけれど、今日だけは、優しかった兄が毎年祝ってくれたこの日だけはただのナナリーでいたかったのだ。実際、心の底からお祝いしてくれる人はパーティなどしなくても言祝ぎをくれた。贈り物をしてくれた。どれも、あの人には劣るものだけれど。
 ああ、私は弱い。兄の心に己がいないだけで、こんなにも不安になるなんて。アーニャにだって、つい本音をこぼしてしまった。お兄様が欲しい。会いたいだなんて。そんなこと言ったって、あの人が戻ってくるわけではないのに。
 それを聞いたアーニャはわかった、とだけ残して去ってしまった。彼女の行動は突拍子もないことが多い。何か問題を起こしていなければいいけれど・・・そんなことを考えていると、コンコンとすぐ近くの扉が音を奏でた。入室を促すと、返ってきたのは心配されていた当の本人の声である。さて、彼女は何をしてきたのかしら?と考えられる可能性をはじき出す前に、聞こえてきたのはズルズルという何かを引き摺る音。・・・嫌な予感しかしない。ああ、なぜ彼女はこんなにもトラブルメーカーなのか。引き攣りそうになる唇の端を必死に抑えながら、私は近くまで歩み寄ってきた少女に質問をした。
「アーニャ、何を持っているの?」
「ルルーシュ様。あとオマケ。」
 そう言って彼女が持ち上げた瞬間、首が締まったのかそのモノは呻き声を上げる。その地を這うような音は、確かに最愛の人のものだった。



 あ、ありのままに今起こったことを話そう。『目が覚めたらブリタニア王宮にいて、目の前に皇女殿下がいらっしゃった。』何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何をされたか分からなかった。しかし、これだけは分かる。今回の件は某ナイトオブシックスの暴走で、この皇女様は悪くない。
 「お兄様・・・?」と不安げな顔で見つめてくる少女に見覚えはないけれど、愛おしさが募る。気づけば俺は、弟にするように彼女の頭を抱き締めていた。
「すみません!皇女殿下にこのようなことを・・・!」
 我に帰り慌てて頭を放すと彼女は傷ついた表情をしたけれど、すぐに笑顔を見せてくれた。
 いいんです、気にしないでくださいと口にした後、彼女は少しためらうかのように唇をもごもごと動かしていたが、アーニャ・アールストレイムに手を握られたことで決心したようだ。当事者でありながら蚊帳の外だった俺に、彼女の口からようやく真相の一部が伝えられる。その第一声は、ごめんなさい、だった。

「貴方は、私のお兄様にそっくりなんです。」

 彼女は彼を思ってかキュッと一度唇を噛み締めるも、すぐに話を再開する。
 続けられた話を総合するとこうだ。
 つまり、この皇女様は以前兄とアッシュフォード学園に通っていたけれど、兄はブラックリべリオンの時より行方不明に。皇女殿下は皇族に戻られたらしい。そして今日は彼女の誕生日なのだが、いつも祝ってくれた兄がいないがために彼女は寂しさを募らせ、それを年頃の近いアーニャにこぼしたところ、彼女は今回の暴挙に出た、と。
「アーニャは私のわがままを聞いてくれただけなんです。だから、」
 絞り出すような声で再び謝罪すると、彼女はそのまま俺の手を縋るように握り締めた。そんな彼女を俺は、慈しみたいと思った。抱き締めたいと思った。全力で祝福してやりたいと思った。
 だから俺は、こんな馬鹿げたことを言い出したのだろうか。ヘタをしたら不敬罪に問われるような、こんな愚かな提案を。

「よろしければ、今日だけでもお兄様の代わりになりましょうか?ナナリー皇女殿下。」



 あ…ありのままに今起きたことを話すよ。『ナイトオブシックスに攫われた兄さんを助けようとしていたのに、目が覚めたら兄さんとナナリーがお茶会をしていた。』何を言ってるのか分からないと思うけど、そんなことは知ったことじゃない。問題は、兄さん、いやルルーシュが記憶を取り戻しているかどうか、だ。
 しかし彼は体を起こす僕を見ると、そんなことは杞憂だと言わんばかりに目を見開いてみせた。
「ロロ、大丈夫か?お前、モルドレッドにしがみついてきたらしいじゃないか。こんな細い体で無茶しすぎだ。」
 いや、貴方よりは筋肉もついてますが・・・という言葉はちゃんと飲み込む。すると、一緒に喉を通る美味しそうな甘い匂い。
 ああ、そういえば今日は僕の偽りの誕生日。つまりはそこで今軽やかに笑う皇女の誕生日なのだ。きっとこれは彼女のためのケーキの匂いに違いない。他にも色とりどりのお菓子が、美しい装飾がなされたティーカップが、豪華だけれど小さめのテーブルに所狭しと並べられているのが見える。そのすべてが、彼にとってただ一人、本当の最愛の人のためのもの。偽りの僕には贈られたことのない、愛情の形。
 羨ましがる自分の心に反応したのか、腹が駄々っ子のように羨望の声を上げる。くすりと笑われ赤くなる僕に、彼は疑いもなく己の手を差し伸べたのだった。

「ロロ、お誕生日おめでとう。さあ、一緒にパーティをしよう。」



 機密情報局から緊急の連絡が入った。僕はちょうどアーニャが突然モルドレッドを持ち出した件で後始末に追われていたところだったのだが、ルルーシュのこととなるとそうも言ってはいられない。嫌な予感に冷や汗を垂らしつつ、唇の端を引き締めて画面に向き合った。
 曰く、ルルーシュがモルドレッドに鷲掴みにされ攫われた、と。

 ・・・アーニャ!君ってやつは!!

 引き攣った頬をそのままに拳を振り下ろすと、机にヒビが入った。
 ああ、これはセシルさんに頼んで作ってもらった特殊な合金でできているのに。ロイドさんに頼まなきゃダメかな。でもロイドさんだと絶対変な機能も付けるからなあ・・・。
 今度は遠い目をしだした僕に、取り次ぎをした部下は一歩距離を取る。振り返ると、さらに三四歩下がられた。白き死神の名はここでも健在のようである。・・・ちょっと寂しい。
 咳払いをひとつしてモニターに向き直る。元々帰還したアーニャに事情を聞きに行こうとしていたところだったのだ。一気に二つも用事が済むならまあいいだろう。そう思い、機情には生徒達を言いくるめるよう指示を出し通信を切った。

 ああ、今日はナナリーの誕生日なのに。これじゃあお祝いどころじゃないよ。

 思わず大きな溜息をつく。暗くなった画面には、疲労の色が濃く見えた。



「わあ、美味しい!お兄様のお味がします!」
「これ、本当に即席で作ったの?流石だね、兄さん!」
 煌びやかな部屋の中、絢爛豪華な調度品に囲まれ、色とりどりのお菓子を啄ばみながらキラキラと輝く笑顔を向けてくる天使たち。まるで一枚の絵のような絶対不可侵の聖域を作り出している弟と妹に、思わずクラクラとする。
 ああ、お前達が可愛すぎて兄さん眩しいよ。
 つられて俺も微笑むと、二人は顔を真っ赤にして俯いてしまった。何か変なことをしたかと聞いても同時になんでもない、と返事をするだけである。俺はひとつ首を傾げると、新しい茶を淹れるために席を立つ。
 チラリとテーブルの方を見やると、二人はぼそぼそと仲良く内緒話をしているようだった。よかった、二人とも良い子だから喧嘩はしないとは思ったが・・・ロロは人見知りだから。緩まった頬はそのままに、俺は一声かけてからナナリー皇女のティーカップを手に取った。

 奇遇なことに、ナナリー皇女とロロの誕生日は一緒だという。勿論贈り物の用意などできていない俺にできる苦肉の策は、お菓子を作ることぐらいだった。勿論、俺のケーキは美味い。俺に死角はないからな。しかし、相手は皇女殿下だ。舌は肥えていらっしゃるだろうし、宮廷料理人を越えるような物は流石の俺でも作れない。・・・けれど、喜んでもらえてよかった。この笑顔を見るだけで俺まで幸せになるようだ。
 ロロへのプレゼントは、白いハート型のロケットにした。思ったより女の子っぽいデザインだったのでナナリー皇女の方が似合いそうだとは思ったが、これは俺がロロのために選んだ物なのだ。たとえナナリー皇女殿下が愛らしくても、ロロ以外の奴にあげようとは思わない。羨ましそうに開かない瞼の奥で見つめてくる彼女に心が痛まなかったわけではないが、笑ってロロに手渡した。その時の戸惑いと歓喜に満ち溢れたロロの表情といったら・・・!思わずナナリー殿下と一緒に強く抱き締めてしまった。

 誕生日おめでとう、ロロ。ナナリー。
 生まれてきてくれてありがとう、俺の大切な兄妹たち。

 そう言って抱き締める力をさらに強くすると、三人でクスクスと笑い合った。
 ・・・両手に花とはまさにこのことだな。きっと俺は今、物凄く締りのない顔をしているに違いない。だが、いいのだ。幸せが形を取ってそこにあるというのに、どうして取り繕わなければならないのか!俺は緩みきった頬をそのままに、二人のふわふわとした頭を撫でる。
 と、そんな幸福な時間を邪魔するように、背後の扉が音を奏でた。ナナリー殿下が皇女の顔をして入室を促すと、返ってきたのは今や出世してあのピンクハリケーンと同僚になった親友の声である。「スザク!」と俺が声を上げると、あいつは一拍置いてから強ばった表情を扉から覗かせた。

「ルルーシュ!君は・・・」
 躊躇うようにそう言ってから、あいつは俺の背の後ろに視線を投げかけると目を見開く。ナナリー皇女が何故かイタズラっぽく微笑むと、あいつはそれっきり口を閉ざしてしまった。
 仕方がないので二人から手を放しあいつの方へ体を向ける。スザクは入口から一歩も動いてはいなかった。俺が手を上げても、不快そうに眉間の皺を深くするだけである。・・・何か悪いことでもしてしまっただろうか?少々居心地が悪くなりながらも事情を説明すると、スザクは今回の件の謝罪とナナリー皇女への祝辞を述べ早々に立ち去ってしまったのだった。
 目を点にしたまま扉を見つめ続ける俺にナナリー殿下は、スザクはお兄様とも仲が良かったため、この状況が居た堪れなかったのではないか、と教えて下さった。
 ・・・そんな話、聞いたこともなかった。そりゃ親友とはいえ、隠し事は誰にでもあるさ。だが・・・。
 視線を落とす俺の袖をロロが引っ張る。顔をあげると、ロロは俺の膝の上に腰掛けフォークを差し出してきた。その先に刺さっているのは、俺が彼らのために焼いたシンプルなスポンジケーキ。
 ああ、昔はよく食べさせあいっこもしたな・・・そんなことを考えると、自然と口角が上がった。こぼれないように舌をつかってフォークを咥えると、ロロのつぶらな瞳と目が合う。・・・少し顔が赤い気がするが、やはりこの年齢になると気恥ずかしいのだろうか。それでも、 俺のためにその恥ずかしことをしてくれたんだ。そう思うと、ケーキの甘みがさらに増した気がした。
 幸せを噛み締めながら、ゆっくりと咀嚼する。ありがとう、と伝えようとして再び口を開くと、またふんわりと少しばかり弾力のある物が俺の歯に触れた。視線でそちらのフォークを辿ると、そこにあったのは白魚のような指と少しむくれた少女のかんばせ。
 相変わらず、ナナリーはお兄ちゃんっ子だな。そう笑いながら、俺は口を開くとそれも一緒に歓迎したのだった。



 人ごとに過ごす時間は違うというが、きっと今の俺達は全く同じ時を生きているに違いない。けれどもその時間はとても短かったようだ。気がつけば空っぽのお皿が並んだテーブルの上には、綺麗に磨かれたガラス窓から朱い陽の光が射し込んでいた。

「そろそろ帰らなきゃな・・・」
 そうこぼすと、皇女殿下は縋るように俺の服の裾を掴む。
 お願いです。もう少しだけ・・・と彼女は言い縋るけども、そうも言ってはいられない。俺はそのいつもより白い、嫋やかな手を傷つけないように優しく握ると、そっと彼女の膝の上に返す。震える身体を抱きしめてやれば、突然俺の肩に温かい雨が降りそそいだ。
「今日一日、という約束だったじゃないですか。お兄様のいじわる。嘘つき・・・!」
 そうポロポロと真珠の涙をこぼす彼女に、俺とロロは顔を見合わせる。少しの間きょどきょどと視線を泳がせていたものの、先に眉尻を下げ引き結んだ唇を開いたのはロロだった。
「いいんじゃない?今日は金曜日だから明日は学校もないし。」
 僕、もう少しナナリーと遊びたいな・・・とか子兎のようなつぶらな瞳で見つめられて、断れるわけないだろうが!という心の声は、全部駄々漏れだったようで、二人揃って笑われてしまった。・・・この調子では、延長戦は長くなりそうである。

 結局俺達は晩御飯や風呂を世話になり、兄の物だというチェスで対決し・・・この豪華な、けれどどこか落ち着く宮殿でのひと時を満喫した。
 しかし、もうこれ以上は延ばせないほどに夜も深まっていた。けれども愛しい妹から縋るような目で一緒に寝てほしい、と懇願されては、首を振れる方向など限定されてしまうに決まっている。
 皇族?不敬罪?そんなもの、彼女の前では大した問題ではないだろう。ロロの大切な友達で、本当の妹のように愛おしい、この少女の前では。
 温かな暗闇の中、俺達は一つのベッドに川の字になると、お互いの体に腕を回しあう。やはり遅くまで起きていて眠たいのか半分閉じられた瞼と、たとえ起きていても完全に閉じられた瞼を向けてくる二人に、俺は祝福のキスのプレゼントをすると、三人でクスクスと笑いあった。

「おやすみ、ロロ。ナナリー。」


 たとえ目に見えなくても、どんなに世界が腐りきっていても、確かにここには、優しい世界が広がっていた。
 ああ、この幸せな時間が、少しでも長く続きますように・・・。


 そんな願いは届かないまま、三人の瞳と共に、許された時は幕を閉じる。




 温かかった部屋の中に、冷たい日の光が差し込む。
 夢から覚めると、広いベットの中、目に入ったのは私のゆるくウェーブのかかった長い髪だけ。真ん中は空っぽ。シーツは完全に冷えきっていた。
 それでも、確かにあの人はここにいた。大切な人の残り香を感じながら、私は閉じられたままの瞳で先を見つめる。

 やはりお兄様はお兄様だった。たとえ記憶を失われていても、あの人の手は、心は優しいままだった。
 忘却の檻は未だ破られる気配はない。けれど、私のことを心のどこかで覚えていてくれた。そのことが、何よりも嬉しかった。

 ですからお兄様、仮面を被らずに待っていてください。
 もう私を助けようと悲しまなくていいんです。私のために、人を犠牲にしなくていいんです。悪魔の力に頼らなくていいんです。今度は、私が貴方を助け出しますから。
 だから、幸せに生きていてください。貴方の望んだ、小さな幸せでいっぱいな日常を。新たな弟と共に。

 あら、私からだと弟じゃなくて兄かしら?と彼を思ってくすくすと笑う。
 あの人を束縛できるのは、最早私だけではない。そのことは、少し寂しかったけれど。

「ちょっとだけなら、貸してあげます。」

 貴方もあの人の弟でいてくれるなら。



「どうしかしたか?ロロ。もしかして、口に合わなかったか?」
 そう心配そうに己を見つめる兄を見て、僕はやっと兄に焦点が合っていない事に気がついた。
「ううん、すごく美味しいよ。」
 それは本心からの言葉。けれどもう一人がいれば、さらに美味しかったに違いない。そう考えて、僕は愕然とした。
 何を言う。自分はあくまで代理、偽者だろう。この愛情は本来もう一人にしか注がれないものなのに。彼女がいたら、自分にはもう見向きもされないはずなのに。
 ・・・いつかルルーシュが記憶を取り戻す日が来たとしたら。たとえそれがどんなに愚かな選択だと分かっていても、自分は多分、彼を殺せないだろう。きっと心のどこかで信じていたいのだ。彼は自分をも受け入れてくれるのではないかと。この間のように、三人で笑いあえるのではないかと。そんなこと、絶対にありえないのに。

 ふと視線を感じ顔を上げると、小首をかしげた兄と目が合った。いけない、いけない。兄は何も覚えていないのだから。自然に振舞わなければ・・・そう自分に自分で喝を入れ、僕はズボンの裾を握り締める。
 物思いにふけることなど、前はなかったのに。自分は本当に変わったと思う。それもこれも、今目の前にいる大罪人のおかげ。
 しかし、再び罪を犯してほしいとは思わない。彼には、優しい世界が似合うのだから。
 けれども考えてしまうのだ。この優しい空間にいたはずの、もう一人の少女のことを。

 僕は下ろされたままの手を組み、そっとロケットを握り締める。兄にばれないよう、机の下で。
 運命の時、兄が自分を拒絶したならば、僕はこの幸せな世界を壊そう。
 けれど、もしも受け入れてくれるのならば――



 許された時は終わったけれど。
 もしも赦されるならば、これからは三人でもいいかもしれない。




――ロロ!ナナリー!Happy Birthday!!
  一ヶ月も大遅刻して申し訳ない。一応ロロナナ誕小説です。
  視点がコロコロ変わるため読みづらくなってしまったのが非常に心残りですが、書いてて凄い楽しかったです。もっと遊べた気もするけれど。スザクもアーニャも出番少ないし。
  ルルーシュのロロとナナリーは俺の嫁!な心の中描写したりとか、キラキラキャッキャウフフ(ゲシゲシ)としながらも仲の良いロロナナとかね!大好きだよ!

  これ書いててやっと気づいたのですが、この二人が一緒に祝ってもらうことが可能な誕生日って、ロロがロケットを貰ったあの日しかないんですよね。いや、Cの世界とか、ロロが任務で日本に来ていて・・・というのなら分かりませんが。
  ロロナナコンビは本当に可愛いけど救えないのが寂しすぎる。そもそもロロは本編だとナナリーと会ってないし。キセキの誕生日見返してて哀しくなってきたよ・・・。
                          三人の複雑だけど幸せなひと時を祝って 2013/10/25

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