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23 November

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25 February

寄り添う二人と一人の狡猾な茶番劇

 姉よ、お誕生日おめでとう!
 というわけで姉へのプレゼントでリクエストの馬場晴信馬場です。
 久々の更新で申し訳ありませんが、また暫くいなくなりそうです(・ ω ・`)

・戦国大戦小説
・万全馬場×晴信×万全馬場
・晴信×源助
・晴信が浮気症
・嫉妬馬場さん独白
・ラブラブなだけ

 以上よろしければ追記よりどうぞ。








 麗らかなる早春の日の出は、この山間の館ではだいぶ遅い。春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、この甲斐の国では寝坊する奴が一気に増える時期でもある。お蔭で暖かい太陽の光に恋人同士が布団からもぞりもぞりと出てくる様は早朝の散歩の名物と化していたりもする。それは俺の恋人である太郎こと武田晴信も例外ではない。
 日の光に目を覚まし、恋人の横顔とぬくもりを堪能し、目が合えばそっと手を握って縁側で寄り添い合う。たったこれだけだというのに心があたたかいものでいっぱいになるから不思議なものだ。俺も太郎もこの至福のひと時がずっと続けばいいと願わずにはいられない。

 そこにいるのが俺ならばな!




寄り添う二人と一人の狡猾な茶番劇




 乱れた服をそのままに縁側で日の光を浴びる太郎の横。俺の指定席に堂々と居座る男は太郎の小姓たる春日源助。あいつの服もまた太郎以上に乱れており、少し気恥ずかしそうな顔をしているのがここからでも憎たらしいほどによく分かる。二人して顔を見合わせては緩んだ目元を細める様はまさに恋人そのもの。そう、本当は今そこにいるべきなのは俺のはず。はずなのだが。俺は回廊の曲がり角から頭を出して悪態をつくことしかできないのだった。

 太郎の浮気は別に今始まったことじゃない。いや、浮気と糾弾するのはそもそも無理な話だ。あいつには既に想いを交わした妻がいる。小姓達との関係を大切にすることも家を保つためには必要だ。むしろ俺を恋人として扱うこと自体が奇跡に近く、長年の想いが実った時はこっそりと涙を拭ったほどだ。
 とはいえ太郎の場合は度が過ぎているため、流石の俺も頭を悩ませている。俺が恥も外聞も捨てて「もっと二人で寝る時間を増やしたい」と頼んでも、いつもの通りハハハと軽く笑い飛ばして睡眠時間を増やすだけ……ってお前は一休さんか!


 深い深い溜め息を一つ吐き出すと、音で気付いたのかチラリと源助が視線をこちらに送ったため慌てて首を引っ込める。おそるおそる覗きこめば、どうやら勘づかれずにすんだようで再び話に花を咲かせているようだった。
 努めて落ち着きを保って見れば、太郎と源助がしているのは普段と変わらないたわいもない世間話だ。太郎がお盛んなのはいつものことだと思えばこの光景からすんなり離れられるさ、と自分を納得させようとした矢先に唇を噛む羽目になる。源助がこれみよがしに太郎に抱きついたのだ。そして満更じゃなさそうな太郎の手は腰へ、尻へと……朝っぱらからお盛んだな。
 朝食もまだだというのにお腹いっぱいのまま様子を見守っていると、チラリと源助がこちらを見やる。その顔に浮かぶのは明らかに敗者を嘲る勝者の笑み。やっぱり確信犯か!と眼光を鋭くすれば慌てて太郎の陰に隠れるが、あいつの胸で舌を出しているに違いない。鬼美濃の二つ名に相応しい形相で睨みつけ、唸り声をあげながらも壁から出られない俺のなんと狡猾なことか。今すぐそこを代われ、と飛び出したい気持ちだけが急く。足が床に貼りついたように動かないのは止められる立場ではないと俺自身がよく知っているからか。
 そんな俺を嘲笑うように、突然くるりと顔を向けたかと思うと太郎は俺へ呆れた顔を作る。
「さっきから何だ。源助が怯えているじゃないか」
 そう言って源助の頭を撫でるあいつの姿はトドメに近く、気がつけば俺は何かしらを喚きながらその場から逃げ出していた。



 羨望の的たる恋人の部屋での、念願の二人だけの時間。望んでいたはずのことなのに、俺は尻の座りが悪いまま太郎と向き合っている。何故、と言われると板垣殿と甘利殿に捕まった俺をこいつがここまで引き摺ってきたためなのだが。広い部屋の中央に敷かれた布団は乱れたままだが、元凶たる源助の姿はない。
「どうした、二人っきりだというのに」
 お前の望み通りだぞ、と顔を近づける太郎が憎たらしいほどに愛おしく手を伸ばしそうになるが、代わりに己の袴を握る。気持ちでは他の奴に負ける気はしない。けれども勝ってはならないのも重々承知しているつもりなんだ。
 俯いたまま動こうとしない俺に痺れを切らしたのか、太郎は重い腰を上げて俺の横を過ぎ去っていく。
 嫌だ!
 気がつけば、体が勝手に太郎の袴を掴んでいた。顔が火照るのを感じながらも慌てて離そうとする俺の手に重なったのは太郎の手で、俺は振り解けないまま唇を引き結ぶ。太郎の手は、まるで早春の日の光のように冷えた俺の手を暖めている。
 太郎、と呟いた俺に太郎は目元を緩めると、どっこいせ、などと気の抜けた声を出しながら俺の背に体重を預ける。
「俺が寄り添うのはお前だけだ、信春」
 源助には寄り添わせてやるだけだからな、と補足する太郎に、俺は背中の力を抜いた。

 日は少し高くなってしまったが、それでも未だ朝と呼べる時間。恋人と手を繋ぎ寄り添い合う、かけがけのない至福のひと時。たとえあいつが他の奴に目移りしても、この時間が帰ってきてくれるならば俺もゆっくり待てるかもしれない。この時間を共有できるのは俺だけなのだから。

 戸の隙間から源助と太郎が親指を立て合っているのは見なかったことにした。




==2015/02/25 21:10 姉ちゃんお誕生日おめでとう!
  というわけでプレゼント代わりのリクエスト消化品です。馬場晴信馬場末永く爆発しろ!
  ちなみにリクエスト内容は「奥さんか小姓と話している晴信を見て嫉妬する万全馬場」でしたが、気がつけば完全に事後です本当にありがとうございましたー。
  晴信が大好きすぎる馬場さんと馬場さんを嫉妬させて楽しむ晴信の図が甘すぎてそろそろ砂糖を吐きそうです。
  しかしこの二人は基本的にリバだと思っているので表記がすごい困りますね。どちらに見えるんでしょうか、これ。

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