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06 December

帽子屋は夢を見る

無断で更新お休みしていて申し訳ありませんでした!お久しぶりです、野乃小町です。

 一日遅れになってしまいましたが、ルル誕になります。
 私、これ更新したらキセキの誕生日見ながらケーキ食べるんだ……


・コードギアス小説
・R2最終回後設定、ナナワンネタ
・2014/12/05 ルルーシュ誕生日記念
・ギャグでもシリアスでもなくなってしまった
・ナナワンオールキャラ
・ルルーシュ愛され

 以上よろしければ、追記よりどうぞ。








 俺の名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。元はハートの国の王子だが国王の不興を買い、今ではいかれたパーティーを年がら年中続けるしがない帽子屋だ。
 動かなくなった時計は午後六時を示している。眠ることも許されない永遠のお茶会の中、カレンとリヴァル、そして時たまやって来る訪問者達に茶を注ぐのが今の俺の仕事だ。
 今日は何日?今日はお誕生日じゃない日だよ。お茶会を始めてからどれくらい?ここは永遠に十八時なんだ。
 あまりにも平和な「何でもない日」。王位だの反逆だのと殺伐したあの頃に比べれば張り合いはないが、ぬるま湯に浸かったように心地よかった。


 いつのまにか机に突っ伏して寝こけていたらしい。頬にピリリと小さな痛みが走る。どうやらお気に入りのティーカップを一つ割ってしまったようだ。眉を寄せ、陶器の破片を払いつつのったりと立ち上がる。と、パチリと澄んだ紫水晶と目が合った。瞬くそれを見て、俺の頭はようやく客の訪問を理解する。こんな時にカレンとリヴァルは何をしているんだ、と文句を付ける相手を求め顔を起こした俺の目に、異様な光景が飛び込んできたのは次の瞬間だった。
 固まった俺に満面の笑みを浮かべるは、この場にはいないはずの鏡の国の白の女王。そんな俺達を見つめるのは、白ウサギに公爵夫人に料理人、それから子鹿のシャーリーだった。いそいそと何かを運んでいるのはユニコーンとライオン。それをあちこちに飾り付けているトウィードルダムとトウィードルディーを手助けするハンプティ・ダンプティは今にも転がり落ちそうで、ジャバウォックに支えられている。焦げた臭いや白煙と共に聞こえる叫びは大工だろうか。忙しさに右往左往するエビにナイフを構えるニセウミガメを宥めるグリフォンを呆然と見ていると、突如頬に感じた違和感に振り向く。少し我慢してくださいね、と今頃になって言うドードーは、俺の顔を拭うとそのハンカチでテーブルクロスを一通り拭き、「ハァアッ!」とかけ声と共にテーブルクロスを抜き取ると即座に洗濯機に投入し代わりに乾いた清潔なクロスをテーブルを叩いた衝撃で浮き上がったティーカップの下に滑り込ませた、なお紅茶一滴零れていない。流石は咲世子。よくやった。
 遠い目をしていると頬を膨らませてさらに顔を近づけてくる異母妹ユーフェミアに、俺は諦めて声をかける。
「何でこんなところにいるんだ?ユフィ。姉上は……」
「置いてきちゃいました」
 お姉様ったら足が遅いのだもの、と笑う彼女に逃げ出してきたんだろう、と零しそうになったが言葉を呑み込む。代わりにカレンとリヴァルの居場所を問えば、後ろから「もう起きちゃったの?まだ寝てればいいのに」などと可愛げのない声がかかった。
「おい、カレン。これはどういうことだ」
 見ての通りよ、今日はみんな来てるの、としれっと答える彼女に、俺は頭を抱える。
 そう、問題は何故かハートの国と鏡の国の住人が揃いも揃ってここに大集合していることだ。自由に外出できない城の連中、いやユフィは除くが、とにかく奴らの他は二つの国の人間が俺の眼前に終結している。よく遊びに来るシャーリーやアーニャ、変な祭りに強制参加させてくる会長に心配性のジェレミア、それから何かと世話を焼いてくれる咲夜子はまだ分かる。だが、何故お前たちまで一緒にいるのか。普段は俺が誘っても来ないくせに。しかも何だこの騒ぎは。俺の優雅なお茶会を返せ。
 ふう、と額を手で押さえ、天を仰ぎ見る。相変わらず黄昏時の空が広がっていることにほっとした。そう、今日もいつもと変わらない、何でもない日のはずなのだ。それなのにこいつらときたら、と眉間に皺を寄せた途端、突然の椅子から落ちる感覚に寸頓狂な声が出た。慌てて尻を浮かせて勢いよく振り返る。背後ではやはりというか、椅子を引っ張ってしたり顔をするリヴァルの姿があった。
「寝不足なんだろ?お茶会の準備は俺達がするから、お前はゆっくり寝てろって」
 ウインクをする悪友が天使にも悪魔にも見えたのは、ここだけの秘密である。


 庭の小さなパーティー会場から追い出されるようにして我が家に入る。悲鳴はここのキッチンからだったようで、まだ伸びている大工と介抱する芋虫に会釈をした。
「残念だけど、キッチンは入らない方がいいわよ?」
 口の中がすっぱくなるような臭いに何度も頷く。とはいえ、リビングからも追い出すのはいかがなものだろうか。ここは俺の家なのだが、と眉を顰めながらも久々に見た寝室のドアを開ける。閉め切っていたはずの部屋からは太陽の匂いだけが鼻に届き、咲世子に礼を言わなくては、と改めて感じた。
 赤く濡れた服を脱ぎ、シャワールームへ足を運ぼうとする。だが、思ったよりも疲労が溜まっていたらしい。気がつけば身体はふわふわのベッドに沈み込み、意識が波間へと攫われていく。


 夢を見るのは嫌いだ。ユフィ、シャーリー、ロロ――決まって誰かを奪い、喪い、憎しみの連鎖を繋げる夢を見る。時たま見るやさしい世界は、まるで蜃気楼のようにすぐに消えてしまうのだ。
 ああ、きょうもまた――

「スザク。約束通り、おまえが俺を殺せ」
「やるのか、どうしても」
「予定通り、世界の憎しみは今、この俺に集まっている。後は俺が消えることで、この憎しみの連鎖を断ち切るだけだ」
 そう言って漆黒の仮面を差し出すのは、俺と同じ姿かたちの白の皇帝。
「黒の騎士団には、ゼロという伝説が残っている。シュナイゼルもゼロに仕える。これで世界は、軍事力ではなく、話し合いという一つのテーブルにつくことができる」
 明日を迎えることができる、と口を閉ざした彼から仮面を受け取った白の騎士は、神妙な面持ちで呟く。
「それが――


「起きろ、ルルーシュ!!」
 突然の衝撃に跳ね起きると目の前にはカレンの腕、その先には拳がめり込み無残な壁の姿があった。いつものことながら、人の部屋を壊すのはいかがなものだろうか。後で修理をするのは俺だというのに。いっそお菓子の家にでも改修してやろうか、などと考えていると、再び衝撃波が襲う。だいぶ風通しがよくなった壁にため息をつきながらも上体を起こすと、カレンは顔を真っ赤にしてバスタオルを投げつけてきた。何なんだこいつは、と嫌味の一つでも言おうとして肌寒さに慌ててタオルをたぐり寄せる。こればかりは彼女に感謝せねば。
「早くシャワー浴びて、いつもの妙なタキシードでも着てきなさいよ」
 お茶会の時間よ、とぶっきらぼうに言う彼女にずっとじゃないか、と返そうとしたが、代わりにため息をつくだけにとどめる。
 まったく、今日はつくづく厄日のようだ。


 何着もある同じ服のうち一つを選び、いつも通り着込んだ俺は姿見を睨みつける。パーティーのホストは俺だ。たとえ小さな終わりのないティーパーティーだろうと、俺が幹事を務めるからには成功させなければならない。そのためにも服装の乱れは細心の注意を払わねば。幸い、取り出した洋服ブラシは使われることなく内ポケットに仕舞われた。
 外では未だ奴らが騒いでいるらしい。椅子は足りないが、まあ、ジェレミアや扇、ギルフォード、ダールトンあたりは空気椅子でいいだろう。後はリヴァルか?どうせ会長につきっきりだろうし。
 何気なく、いつものように扉を開けた俺の耳に沢山の破裂音が聞こえたのはその直後だった。

「何だ……何が起こってるんだ……?」
 穏やかな夕暮れの中、立ち上る硝煙。続いて舞い散る色とりどりの紙と響く拍手に、俺は呆然と呟く。見回してみれば、嫌な予感のする笑みを返す連中に混じり、先ほどまではなかった顔が四つ。
「姉上、兄上……カノンやジノまで。揃いも揃ってどうしたんです?」
 これで憎きハートの国王夫妻と伯父、そして白の騎士の他はここに終結したことになる。もしやこれは兄上の策略か、と視線を送れば、相変わらず、いやいつもより素直なロイヤルスマイルをたたえていた。少し驚くが、ならば姉上は、と見ればこちらも優しい笑みを浮かべている。こんな顔、最後に見たのはいつだっただろうか。
「すまない、遅くなってしまったね。クロッケーを飛ばしてきたんだが」
 見れば上空にあの奇妙な天空城砦が浮いていた。
「大丈夫です、お父様もマリアンヌ様も伯父様もまだいらしていませんから」
「あいつらも来るのか!?」
 今日はいったい何の祭りなのか。まさか、ついに俺に王位を押し付け隠居するためにここで戴冠式でも挙げる気か。俺は王冠なんぞ被らないからな!帽子こそ至高だ。だが、あの趣味の悪い帽子だけはいけ好かない。誰が好き好んでハート形のパトランプを回したいと思うか。
 善は急げ、どこかに身を隠そうと回れ右をした俺の背後から、聞き覚えのありすぎる巻き舌ボイスが響く。
「見つけたぞ、ルルーシュよ!!」
「久しぶりね!記念に誰か首をちょん切ってもいいかしら?」
 ウフフと笑う実母の声が、遅かったわね、と嘲るように聞こえた。


 呆然と立ち尽くす俺を無理やり座らせた連中は、にこにこと気味の悪い笑みを浮かべてこちらを覗き込む。
 テーブルには、本当に色とりどりの食事やケーキ、なみなみと紅茶を注がれたティーカップが並べてあった。中央で凛と咲いている一輪のバラが俺好みだ。赤く染まる空の下、少し早いが灯りがともされる。相変わらずハドロン砲にバターが塗ってあったが、お茶会の準備は確かに完了していた。
「すまないな、用意してもらって」
「そりゃあ、パーティーの主役にやらせるわけにはいかないからね!」
 「と言いつつ会長、何度かルルに助け求めようとしてたじゃないですか」と子鹿からの告発があったが、だってーと頬を膨らませる彼女に文句は言えない。あのすっぱい臭いを消すだけでも相当な苦労があっただろう。それより気になることがあった。
「お前たち、座らないのか?」
 そう、今席についているのは一番座らせたくないハートの王夫妻と侍従だけで、他はテーブルを囲うようにして立っていた。男どもやカレンはともかく女性陣だけでも座らせた方が、と口を開いた途端ウサギに足を踏まれたのは偶然だと願いたい。おとなしく口を閉ざした俺にセイウチはにこやかに言う。
「スザク君達がまだですから」
 結局各国の人間が勢ぞろいするのか、と嫌な予感に冷や汗をたらす。やはり逃げるべきだったか。・・・おい、誰だ今一瞬で捕まるだろうとか言った奴は。

 ふう、と一つ息を吐いて椅子にもたれる。けれどまあ、こんな日常もありかもしれない。いつものことか、と問われれば否定せざるを得ないが、これも何でもない日に変えてしまえばいいじゃないか。そう思うと一気に体の力が抜けた。ぬるま湯に浸かっているうちに、いつの間にかさらにイレギュラーに弱くなっていたようだと自嘲してティーポットを片手にゆっくりと立ち上がる。パーティーのホストは俺であってこそ。イレギュラーを手懐けるには、まず手綱を握らなくてはな。
 何か足りないものはないかともう一度テーブルの上を見回すと、蝋燭の位置がおかしかった。灯りの必要性はほぼないとはいえ、何が何でも密集しすぎだ。しかも、何故ケーキの上に刺しているのか。これではまるで……
 血の気が引いていくのを感じながら、懐中時計を取り出そうとして脱ぎっぱなしの服の中だと気づく。慌てて横で微笑むニセウミガメに日付を問い質した。
「兄さん、気づいてなかったの?今日はね……」
 そう興奮したように捲くしたてる弟を遮ったのは、聞きなれた蹄の音だ。スザク!と声をかけようとした俺の目に入ったのは、白の騎士に手を貸され愛馬から舞い降りる天使。
 ふわりと地上に下り立った彼女は、俺を見て満面の笑みに涙を浮かべ、少し大人びた、けれども喜びを隠し切れない声を出す。

「お誕生日おめでとうございます、お兄様」

「ナ、ナリー」
 指が震える。声が掠れる。目を閉じることができない。
 嗚呼、何ということだ。ナナリーが、ナナリーにまた会えるなんて。もう二度と会えないと思っていたのに……。何故そう考えたのかは、まったく思い出せないけれど。
 そう、これは最高のプレゼント。だからこそ、俺は……

「帰ってくれ。パーティーは中止だ」
 冷たく言い放ち踵を返すと、ざわ、と戸惑いの声が上がる。当然だ、気ままなこいつらがわざわざ揃って一日中準備したのだろうから。けれど煮え湯を飲まされた気分は変わらない。不気味に輝く蝋燭の光が忌々しかった。
 大股で近寄った玄関のドアノブに手をかけると、同時に別の手によってつかまれる。払いのけようとした勢いで振り返れば、あの夢に出てきた白の騎士と同じ顔をした親友が立っていた。
「離せ、スザク」
 俺は、今日だけは、と続けようとした言葉をスザクは遮る。
「何でもない日じゃないと祝わないの?」
 思わず唇をかみ締めた。そうだ、誕生日など何でもない日ではない。それも、俺のような世界から弾き出されたイレギュラーが生まれた日なんて。そんな俺に「僕たちの誕生日は祝ってくれるのにね」と呟くスザクの目は深く淀んで何も見えない。こんなこと初めてだった。
 奥歯を噛み締めもがくが、微動だにしないスザクに焦燥感ばかりが募る。そんな俺の手をやさしく包んだのは、白魚のような天使の指。
「お願いです、お兄様。一緒にお祝いしましょう?」
 ナナリーはお兄様とお祝いしたくてここまで来たんです、と縋る声と共に握る力が強くなる。呼応するように背中にしがみついてきたのはロロだろう。前門の虎後門の狼というには愛らしすぎる彼女らの対応に困っていると、他の連中までやって来て口々に文句を言う。
「どういうことだ、ルルーシュ!!私のことが嫌いになったのか!?」
「お願いです、ルルーシュ!私はルルーシュの誕生日をお祝いしたいだけなんです!!」
「ルルちゃん、人の好意はちゃんと受けなさい!会長命令です!!」
「そうだそうだ!悪友代表としても言わせて貰うけど、君付き合い悪すぎ!たまにはもっと俺達にも構え!!」
「ルルがいなくてもみんなだけで祝っちゃうよ?いいの!?ルルがいないと、私……」
「こんのすっとこどっこい!!」
「ふ、ふふふふふ……」
「先輩、可愛い女の子達を泣かせておいてただで帰せるわけがないでしょう?というわけで、一緒にお祝いしましょうよ」
「年をとっても最低なルルーシュ、記録……」
「殿下!何卒お考え直しを!!」
「帽子屋殿、私達からもお願いします」
「やはり主役がいなければ締まらないからな」
「そうですよ!せっかく特製闇鍋ケーキも……」
「あー!あー!何にも言ってませーん!!……いやあ、是非君にもお腹いっぱい食べてもらいたいなあ、セイウチ君の特製ケーキ!」
「私も一緒に作ったんですよ?妻の手料理に手をつけないなんて、男が泣きますわ!」
「あの、お誕生日はみんなでお祝いしたらもっと楽しくなると思うのですが……」
「天子様もこう言っておられるんだ、早く席に戻れ」
「そうよ、せっかく薬の感想ももらおうと思ってたのに」
「ご安心ください。私が毒見役をいたします」
「皆もこう言ってるんだ、そろそろ機嫌を直したらどうだ?なあ、扇」
「ああ」
「そうだ、クロッケーで勝負をしよう。私が勝ったらパーティーに参加してもらおうか。君は私に一度もクロッケーで勝ったことはないけど、まさか逃げるなんて言わないよね?」
「さようでございますですね!」
 こんなに突き放してもまだ祝おうとしてくれるのか。呆れざるを得ないが、自然と唇の端が上がるのを感じる。だが。
 努めて顔を強ばらせた俺の頭に突然温かい物が乗せられる。見上げれば、憎き父親の手だった。払い除けたいのに、身体がいうとこを聞かない。親父、とこぼすとゆっくり撫でられる。奴の手は思っていた以上にあたたかく、そしてやさしかった。
「僕からのプレゼント。首を出して」
 小さな伯父が精一杯背伸びをするため、仕方がなく少し屈む。と、伯父が触れた箇所がじんわりと熱くなり、全身に力が満ちていく。にっこりと曇りない笑顔で彼は、よく似合ってるよ、と訳の分からないことを呟いた。その後ろで母は、にっこりといつもの底の見えない笑みを浮かべる。
「別に貴方が生まれたから不幸になった人なんていないわよ?」
 胸を張りなさい、私の息子なんだから、と不敵に笑う彼女に驚きを隠せない。こんな俺なんかに、どうして、みんなして。

「おまえが何でもない日の大切さを教えたからだろう?ルルーシュ」

 離れた位置から聞こえた声に一斉に振り返る。そこには、俺の相棒ともいえるチェシャ猫の姿があった。足音一つ立てず俺に近づいた彼女は、不器用な折り鶴を押し付けてきて、邪気のない笑みを浮かべる。
「今日だって何でもない日にすればいいじゃないか」
 おまえらしくないな、と目を細める彼女にらしくないのはどっちだ、と軽口を叩く。けれどもう俺にも分かっていた。俺の誕生日だって、何でもない日にできるのだと。いや、できなくてもやってやる。俺は奇跡を起こす男だからな。
 ククク、と堪えきれない笑いをそのまま出してやると、不思議そうな顔をする者に目を見開く者、安堵の色を滲ませる者と各人各様の反応が返る。そうだ、パーティーの主役は俺。お前たちはただの一般参加者。振り回す側は俺なのだ。イレギュラーを平凡な日常に組み込むには、まずは手綱を握らなくてはな。
 高笑いを一つして、ニヤリと口の端を上げる。お茶会の準備は万全。寝不足も解消された。客も集まり俺の一挙一動を見守っている。全てが全て、俺に有利な状況だった。

 さあ、平和で楽しい何でもない日を祝おうじゃないか。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる――お前たちは、全力で俺の誕生日を祝え!!」



「今日はおまえの誕生日だったな、ルルーシュ」
 おめでとう、と小さな呟きが虚空に響く。夕闇の中、蝋燭の光は漆黒の髪をあたたかく照らしていた。私はその美しい髪を一房摘むと指に絡めて遊ぶ。さらさらと逃げるそれにあいつを思い出しながら、もう片方の手で彼の白い頬を撫でた。

 ゼロレクイエムは成功した。世界中の憎しみは彼に集まり、彼は予定通り親友に自らの命を絶たせた。憎しみの連鎖とともに。
 だが一つ、彼にも計算外のことがあったらしい。なんとV.V.のコードを継承していたのだ。そう、彼は死んでいない。いつ生き返ってもおかしくはない、はずなのに。
 彼はあの日から眠り続けている。あの日、雲ひとつない青空の下浮かべた、空と同じくらい晴れやかな笑顔のまま。

 平和で憎しみ合うこともなく他者を思いやれる世界から自らを弾き出したあいつが望んだ何でもない日々は、彼を愛する人々には辛すぎるものだった。人々の恨みの声や罵倒はここからでもよく聞こえる。それでもこいつは笑うんだな。あの日と同じように。
 だがしかし、まさかこいつらまで来るとは思わなかったな、と見慣れた黒衣を纏う男とこの国の代表たる少女を見やる。せっかくこれだけ愛されてるんだ。意固地にならず、早く目を覚ませばいいのに。
 けれど、私達に残された時間は永遠だから。

 私は待とう。いつか今日が、何でもない日になるその日まで。彼と共に今日を祝えるように。

 ふう、と息を吹きかけると、灯火はいとも簡単に消えてしまうように思えたが、仲良く三つだけ残ってしまった。もう一度顔を近づけようとしたが、代わりにすぐ傍の蝋燭に火をつける。蝋燭の火はゆらゆらと揺れても、消える気配はない。私は胸が軽くなるのを感じながら、愛しい魔王に一度口づけを落とすと、抱えるようにして目を閉じた。


 午後六時、安らかに微笑む四つの顔を、四つ仲良く並んだ灯火が優しく照らしていた。




   帽子屋は夢を見る
 ―Happy no special days!!―




<<2014/12/06 10:58 Happy Birthday Lelouch!
  一日遅れで申し訳ありません、ルルーシュ誕です。
  ルルーシュが祝う「何でもない日」って、きっと平和で平凡な、けれども小さな幸せでキラキラ
 輝いている、そんなやさしい世界なんだろうなあ、と。
  しかし悪逆皇帝の誕生日なんて(周知されている場合)いろんな意味でお祭り騒ぎになるだろう
 に、ナナリー代表やゼロがこんなところにいていいのか、とは思いますがそれでも来ちゃいそうで
 すよね、この二人。

  副題はアリスの通りHappy anbirthdayにしようかと迷いましたが、誕生日ではあるので変更。
  久々に書いたせいか面白みのかけらもない文章で非常に申し訳ない。今回はあえて会話文多めに
 したけど、いつもくらいでよさそうだなあ。

  しかし、ナナワン面子だけとはいえオールキャラは辛いですね……。ちょいちょい会話する程度
 になってしまいます。
  途中で扇を忘れていることに気づいて入れたのですが、バドレーは最後まですっかり忘れていま
 した。バドレー好きなんだけどね、ジェレミアのインパクトが強すぎてね。ごめんねバドレー。>>

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