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14 December

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04 November

一家団欒

 昨日は旧暦十二月一日、信玄公のお誕生日だったようですね。
 一日遅れですがお祝い小説です・・・が、ショタです。大戦です。しかも現パロです。お堅い物を期待された方、申し訳ない。


・戦国大戦小説。
・武田晴信(信玄)誕生日記念。
・現代パラレル。
・晴信がショタ。
・馬場美濃さんが生徒。
・板垣がお父さん兼不審者。
・甘利が拳で語る男。
・信虎が酷い。
・短いうえに唐突に終わる。
・ほのぼの。
・妄想100%。

 以上よろしければ追記よりどうぞ。








 キラキラとした装飾に、心地よい雑踏。甘い匂いが漂う中、この場に不似合いな大男はくたびれたスーツをそのままに頭を掻いた。
 身長は高い方だが、それよりも特筆すべきはその鍛え上げられた体躯であろう。ボディビルダーもかくやといった風貌であるため、纏っているスーツもぱつんぱつんで今にもはち切れんばかりである。手に持つスーツケースがやけに小さく見えるのも、おそらくそのせいであろう。撫で付けた頭は苦労症なのか、額がやけに広かった。
 それだけでも目を引くというのに、彼が酷く頭を悩ませている物が物だった。小奇麗に陳列された色とりどりのケーキ、それもホールである。いかにも独身といった男だが、妻か子の誕生日なのだろうか。両親を選択肢から外したのは、彼の視線の先が可愛らしいキャラクター物だったからにほかならない。
 じっとトラの顔とにらめっこをした後、もう一巡視線を巡らせた彼は財布の口を開いた。ちらりと腕時計を見ていたので、あまり時間がないのだろう。それもそのはず。彼がこの小さなショーケースの前に立ってから、はや小一時間が経っていた。


 ありがとうございます、という安堵の声を聞き流し、大男こと板垣信方は額に眉を寄せて歩いた。
 板垣にとってこの日は、お察しの通り息子の誕生日である。しかし毎年のことながら、戸惑いを拭いきれないのも確かだとも板垣は思う。

 板垣の息子は、正確には板垣とは全く繋がりはない。血縁でもなければ、養子ですらなかった。何故このような複雑な状況に陥ったかというと、全ては板垣の上司であり社長である武田信虎が、秘書である板垣に育児を丸投げしたからである。
 板垣は思う。社長の気まぐれで無理難題を押し付けられることは多々あったが、これに勝る案件はおそらく一生ないだろうと。断言できない彼を非難できる者がいれば、それは信虎の人となりを知らぬ者のみだ。
 だが、板垣には別に不満があるわけではない。元々独身だった身だ、一人増えたところで揉める相手はいないし、何より当の子は陰険な信虎とは比べ物にならないほどに素直で良い子へと成長していた。それを自慢こそすれ愚痴など洩れるはずがなく、あるとするならば、この不確かな関係への不安だけだと彼はため息をつく。
 その証拠に、彼は息子、晴信に本当の父の話をしたことはない。板垣は晴信を実の息子として扱うし、晴信は板垣を実の父と信じて疑わない。今はそれでいい、と考える板垣ではあるが、いつ信虎が気まぐれで連れ戻すかと思いを巡らせるだけで胸が締め付けられてやまないのだった。

 いつも歩いている道のりだが、今日は常よりも慎重に、腕に下げた紙箱が傾かないよう歩みを進める。
 もう日はとっくに姿を隠し、空には月があたたかい光をもって道を照らしている。行く道をじっと見る板垣の足取りは徐々に軽く、荷物を宙に放り投げないか不安になるほど腕を振り回していった。
 人にこそ遇わなかったが、道中犬の大合唱に出迎えられたのは決して偶然ではないだろう。


 半ば跳ねるように階段を上った彼を出迎えたのは、ちょうど我が家から顔を出した相棒の顔だった。
 珍しく目を丸くする彼の名は甘利虎泰。板垣の同僚であり、互いの合鍵を渡す間柄だ。かの有名な武田信玄およびその父に仕えた古の勇士たちと図らずも同じ名前であり、関係まで酷似していることに彼らは気がついていないが、気づいたところで照れ笑いを交わすだけだろう。
 さて、当の甘利だが、彼は出鼻を挫かれたような表情を隠せない様子だった。対する板垣の表情はというと、完全に溶けていた。いくら酔っ払いでもここまではそうなるまいというほどにでろっでろに蕩けていた。怪訝そうに伺う様がさらに不審者を演出している。甘利は無意識に実力行使に出ていた。横っ面を思いっきりへこませ、吹っ飛んでいく巨体の男は、それでもなおケーキを倒さなかったという。

 「気持ち悪い、頭でも冷やせ」とは、その後正気に戻るまで殴り飛ばした挙句板垣に水をかけた甘利の第一声である。下手したら暴行罪に問われるほどの狼藉だが、当の被害者が少し頬を赤くした程度なのでもしも通報されたとしても軽い喧嘩としか思われないだろうし、そもそも日常茶飯事のためにいちいち警官を呼ぶ人間などこのマンションには居合わせていない。
 水難から逃れた紙箱を甘利に渡し、板垣はこっそりと風呂場に移動しようとするが、すぐに今一番見つかりたくはない相手に捕捉されてしまった。目を丸くしながらも第一声は「おかえり」だったのは、単に板垣の教育の賜物であろう。そんな我が子を見て、常のように飛びつかなかった板垣の理性は強靭だった。

 板垣が雄たけびを上げながらシャワーを浴びていた頃、晴信と甘利はというと、二人で顔を見合わせて笑っていた。先ほど運ばれてきたケーキもセッティングし、既にパーティーは準備万端だ。大慌てで支度しようと飛び出してみたら、阿形像の如く立ち尽くす板垣が見れるという寸法である。ただの悪戯ではなく気遣いでもあるところが、この晴信という少年足らしめていた。
 かくして二人の計画は功をなし、鳩が豆鉄砲を食らったような顔の板垣を大笑いした二人は、板垣に抱きしめられて顔をさらに綻ばせるのだった。


 甘利と板垣二人からのプレゼントは、虎を思わせる縞模様のマフラーだった。これには晴信も食いつく。生来ふわふわモコモコしたものが大好きなこの少年は、そういったものを切り捨てる年頃であっても変わらなかった。
 「もふもふだ!」と顔をうずめる少年に慈愛と安堵の笑みを送りながら、二人はワインを開ける。互いの誕生日はビールを飲みあうだけだったというのに、この子が来てから変わったな、とは甘利の談である。
 さて蝋燭に火をつけようか、と板垣が立ち上がったところで、ドアのチャイムが鳴らされた。社宅とはいえ金がかかったマンションである。玄関まで直接来たのならば同僚か、同僚に招かれた宅配業者だろうと無遠慮に扉を開いた板垣に罪はないであろう。
 結果、覗き口から迎え撃とうとした少年は、勢いよく開いた扉に吹っ飛ばされることになったのであった。

 子供達が微笑ましい会話を続けている間、板垣は申し訳なさそうに少年の赤くなった額に氷を当てている。常ならば食器を用意するところだが、今は甘利の役割である。
 少年、馬場信春は近所に住む高校生だ。晴信の七つ年上である。晴信の小さい頃からの友達であり、兄のように慕っている存在ではあるが、何故この遅い時間にやって来たのか。そう頭を抱える板垣に、信春は平然と「まあいいじゃないですか」とだけ答えた。晴信の誕生日である以上説教は避けたい板垣も、次来たときは覚悟しておけ、と言わんばかりの視線を送るだけにとどめ、結果ケーキは四等分されることになったのである。


 一声かけてから電気を消すと、主役は久しぶりに見る蝋燭を食い入るように見つめていた。10本並んだともし火は、ゆらゆらと晴信の視線を揺らす。そんな彼を見つめる三人の目元は、一様に緩んでいる。それを指摘されれば、顔を赤らめて笑いあうしかなかった。
 血の繋がりはない。家も違う。けれども彼らは、確かに家族だった。
 どうか来年も、この日を共に祝えますように。晴信が目を輝かせて火を吹き消す間、板垣は父の顔をして願った。


 10年前までは静かだったこの家に、賑やかな笑い声が花開く。この花がいつ散るのか。それを知る術を板垣は持ち合わせていなかった。




  一家団欒




<<2014/11/04 19:30
  一日遅れで申し訳ない。旧暦12/01、武田信玄公のお誕生日記念です。おめでとうございます。
  ・・・こんなのを書いた後に信玄公と呼ぶのに凄い抵抗がありますが、いいんです。可愛いは正義。

  というわけで戦国大戦より武田晴信10歳+お父さん阿吽+近所のお兄ちゃんな万全馬場さんで現代パラレルでした。
  史実も大戦もほとんど知らないので、この四人は結構自由奔放に妄想しています。
  お父さんに疎まれていた晴信だからこそ、板垣達があたたかく接していたらいいな、と思わずにはいられません。
 ちなみに信虎の会社は製薬会社で、ヤのつく今川と繋がりがあるイメージがありますが、会社名がなかなか思いつかないという。

  最近は一人称で書くことが多かったせいか、ついつい一人称や神視点になってしまいますね。気を付けなくては。

  ほとんどネタを提供してくれた姉にこっそり捧げます。お持ち帰りしてもいいのよ!



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