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29 March

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28 October

君命

 唐突なジェレルル(?)です。はい、初CP小説です。
 

・コードギアス小説
・反逆のルルーシュR2最終回後
・ジェレミア→←ルルーシュ
・ジェレミア独白

 以上よろしければ、追記よりどうぞ。







 私の一日は、水をやることから始まる。

 わざわざ植えた花花を枯らすわけにはいかない。念入りに、濡れないところがないようにジョウロを傾ける。
 チョロチョロチョロ、という陽気な音だけが辺りに響く。水が切れれば、再び静寂に包まれた。
 山山では木が生い茂り鳥が歌うというのに、この場所だけは耳が痛くなるほどの沈黙が続いている。まるで喪にでも服しているようだ。
 それでもここだけは青青としているのは、毎日の成果か。それにしても、ここだけ浮いてしまっていないか。禿げた大地を見て、私は唸らざるを得なかった。

 全力で納屋に駆け込み、花の種を持って舞い戻る。途中アーニャが畑に向かおうとしていたが、腰を痛めていたので暇を与えた。かつては最年少のナイトオブラウンズとして名を馳せた少女も、今ではただの老婆だ。
 納屋から花畑まではそう離れていない。太陽は無慈悲にも輝き続けるが、この程度の時間ならば土が乾いてしまうことはないだろう。慣れた獣道を駆けながら、私は唇を噛み締めた。道は厳しく木の根や枝葉が張り巡らせているが、種も水も零さずに走るのはもう造作もないことだった。


 相変わらず静かな場所である。生きとし生けるもの全てが畏れ多いと逃げてしまったようだが、活き活きと生命力に溢れた花達だけが無遠慮にのさばっている。
 そういえば彼は、懐に入れた者には懇懇と湧き出る愛を与えたが、そうでない者は徹底して遠ざけた。そうか、こ奴らは懐に入れたのか。そう思うと憎たらしくてしょうがないが、ないとないで私が困る。努めて大きく息を吐くと、私は優しく土を撫でた。

 深く掘りすぎないよう注意しながら、錆びた機械の手で土を耕す。鍬を使うわけにはいかないが、これも慣れた作業なので大して時間はかからない。
 今回植えるのは紫色が眩しい可憐な花だ。しかしどんなに美しかろうと、何十年も前に弔われたあの紫雲英には敵わない。
 嗚呼、あの唯一無二の至宝に再び合間見えるには、後どれほどの時間が必要なのだろうか。


 彼の最後で最大の計画を聞かされた時、私は身震いした。
 嗚呼、私はこれから、絶対に逆らえない主君の命により、絶対に守りたい主君を死地に追いやらねばならない。
 けれども本当に恐ろしいのは、私よりもあのお方であろう。私は知っている。戦慄く体を必死に押しとどめて笑う彼を。無礼を承知で抱き締めた私の硬い胸に、縋るようにしがみつくその手を。
 本当は、何もかも棄てて連れ去りたい。何が何でも生きていてほしい。そんな思いばかり募っていった。しかし彼の最後の命を無視することはできず、また世界は既にゼロレクイエムなしでは成り立たたなくなっていた。
 だからこそ私は笑顔で送り出すことに決めた。彼が不安に駆られぬように、崩れ落ちそうになった時そっと支えられるように。

 この感情が恋だと知ったのは、あのお方を失ってからだった。


 陛下は私のみを呼び付け、仰った。前皇帝陛下のコードを継承なさっていたと、そして生き返るのはいつになるか不明だと。
「ジェレミア、死体はお前の家の近くに埋めて欲しい。そうしたら、墓標は作らずに周りに花を植えてくれないか?」
 悪逆皇帝の墓はあってはならない。あったとしても全ての恨みの捌け口として大々的にあるべきだ。死体は厳重に隠せ、と彼は続けて口を開く。
 呆気に取られながらも一言も洩らさず聴いていた私は、確たる信念を持ち頭を垂れた。
「イエス、ユアマジェスティ」
 たとえこの身が朽ち果てようとも、私はルルーシュ様のお帰りをお待ちしております。


 種を覆う地面に一通り水をかけた後、あのお方が眠る場所にもう一度向き直る。空は晴れ渡り、太陽は私達を焼き切ろうとしている。まるであの日、彼を刺し貫いた光のように。
 黒と白、紫と赤。色とりどりの花は静かな風に揺られ、ただただ佇んでいる。これらはあの日、冷えきった彼を一人ここまで運んできた時に植えた花々の子孫だった。

 そっと地面に膝をつき、祈るように手を組む。
 あのお方の命をいただかなければ、私は恐らく後を追っていただろう。この気持ちが恋愛感情だと知った時の衝撃を考えれば、そのくらいは容易に想像がつく。
 あの話は本当なのだろうか。それとも、私の想いに気がついた彼の、精一杯の優しさなのだろうか。お答えくださるお方は、土の中、安らかに眠り続けている。
 しかし真偽のほどは問題ではない。あのお方から命じられた最後の任務を疑うなど、できるはずもないからだ。

 土と錆に汚れた手足は、動くたびにきしきしと奇妙な音がする。油は差しているので、恐らくこの体も寿命がきているのだろう。
 もしも動かなくなったら、アーニャはここに連れてきてくれるだろうか。今日中にでも話をつけておこうか。
 共にこの地で眠るなどおこがましいことだが、永遠にお守りするためだ、と言い訳がましいことを思いながらもう一度ルルーシュ様の眠る大地の上を撫でる。

 嗚呼、優しくて嘘つきな我が主よ。どうか今一度奇跡を起こしたまえ。


 私の一日は、水をやることで終わる。

 溢れ出る物も全て、水はやさしく流してくれた。




  君命




<<2014/10/28 21:19
  唐突なジェレ→←ルル!
  というわけで、ギアスで初カップリング小説でした。くっついていないのは仕様です。
  ダモクレスが終わった後のルルーシュってスザクと一緒にいることが多くなって気まずいと思うんだ。
 そんな時に何も言わなくても傍にいてくれるジェレミアへ思わず手を伸ばしちゃうルルーシュと、ルルーシュ様への気持ちが大きくなりすぎたジェレミアが急接近するんだけれど、
 それでもお互いの気持ちが言えない二人がとっても美味しいと思うのです。嗚呼うまく纏まらない。
  今度書くときはラブラブが良いなあ、とは思うものの、ただのギャグになる予感しかないです。

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