31 March 愛の抑止力 ・METAL GEAR SOLID PEACE WALKER派生・パスの日記ネタ・突発殴り書き・非常に短い 以上よろしければ追記よりどうぞ。 指令書が、届いた。 それは、夢見る学生の終わりを告げる、何よりも望ましくないものであった。愛の抑止力 カズヒラ・ミラーは、所謂女好きだった。しかし、それでいながら腹の底の見えない男で、私は彼が苦手だ。 そんな彼がバンドをやろうと言い出したのは、決して下心でなかったのはよく分かっている。だからこそ、私はボーカルなんて目立つ役を引き受けたのだった。 バンドの初ステージは、ここMSFで開かれる平和の日。歌う曲は、『恋の抑止力』。カズヒラが私に歌ってもらうためだけに作った、たった一つの歌だ。 ・・・・恋だの、ドキドキだの、馬鹿らしい。まるで、本当にただの夢見る学生のよう。口に出すのも恥ずかしいものの、練習もせずに披露できるほど私は歌が上手くない。 正直ボーカルなんて辞めてしまいたかったが、周囲からの期待の目や、チコやカズヒラの激励を裏切れるほどここでの地位を築いていない私は、仕方がなく練習に参加し、こっそりと自主練をつんだ。 気づけば自然と口について出るようになるまでに時間はさほど掛からなかった。 そんな日々の終わりを告げる合図が来たのは、そのお祭りの三日前だった。 おぼつかない足を無理やり普段通りに動かして、甲板に出た。マザーベースは海上にある。風は強く、元々クセの強い髪がさらに重くなるのを嫌がっていたのは、もう随分昔のことだ。 そのままふちに立ち、下を覗き込むと目に入る真っ青な輝き。仰ぎ見れば、真っ白な羊が走る澄んだ青が視界いっぱいに広がった。 この場所は、私が歌を練習するときの指定席だった。鉄と火薬と男の臭いに満ちた室内よりは、雄大な自然の前で歌った方が気持ちがいいし、人に聞かれる心配も途中で素面に戻ることもなくてすむからだ。 いつもの通り、潮の匂いを肺いっぱいに吸い込む。立ち方も踊りもあったものじゃない。けれども、伸びやかに、自然に、思うように。 頭の中で駆け巡る楽器の音。カズヒラのお調子者っぽい、けれどあたたかい笑み。ザドルノフの困惑しながらも、自然と緩んだ目元。そして、ここに来てからの、呆れるほどに平和な毎日。 始まりなんて分からないの。 気づけば、ここでの生活が少しでも長く続けばいいと思っていた。 素直な気持ち閉じ込め、殻にこもった自分が嫌で。 それでも、そんな自分を受け入れて、愛してくれた人たちが、ここには沢山いた。 この日が来ることなんて、とっくのとうに知っていたはずなのに。 任務を忘れた日なんて、CIPHERを裏切ろうと考えた日なんてなかったはずなのに。 どうして、どうして・・・・! せめて、後三日だけでも。平和の日が終わるまでは・・・・。 そう思った私は、気づけば手に工具を持っていた。 I love you. 届いてこの想い。 きっといつかは叶うよね。こんな気持ち、切なすぎるの。 お願い、止めて・・・・ 今日で、ここともお別れ。夢見る学生のふりはもう終わりなの。 それを喜べたのは、きっと最初の頃だけだった。―――恋の抑止力のPVで甲板のふちに立つパスを見ていたら、手が勝手に書いていたブツです。 パス戦のBGMは反則だと思うの・・・・。 [0回]PR